それでも好き
shiyushiyu
プロローグ
誰もが経験があるだろう……
本当に好きな人とは別の人と付き合ってしまうこと……
おとぎ話や漫画の世界では、意中の人と自分が相思相愛でそのまま付き合う。そして見事結婚。なんてこともあるだろうが、現実はそうはいかない。
本当に好きな人が他の人を好きでいることはよくあることだし、その本当に好きな人を忘れるために他の人と付き合うこともよくあることだ。
そして結婚して、子供ができて、仕事もそこそこうまくいき、いわゆる平凡だけど何一つ不自由なく幸せな生活を手に入れて尚、思い出す。
あの頃の、本当に好きだった人のことを――
もしもあの時、付き合っていたらばどんな人生だったのだろうか?
きっと今みたいに幸せではないし、大切な妻にも娘たちにも出会えていないだろう。
それでも思わずにはいられない――
それほどに本気で愛し、本気で青春をしていたのだ――
●
今となっては記憶も薄れているが、彼女と初めて出会ったのは鮮明に覚えている。
高校1年の頃だ。
同じバスケ部で、同じクラスで、特別仲が良かったわけではない。
むしろ、そんなに喋った記憶はない。
それでも、向こうもなんとなく自分のことを好きなんじゃないか。という気がしていた。
俺が行った高校は、偏差値もさほど高くなく、制服が可愛いという理由だけで女子が多く集まるような高校だった。
俺は中学の時の成績はそこそこ良く、本当であればこの高校よりももっと上の高校を目指せていた。
もしも、もっと上の高校に入学していたら、彼女と出会うことはなく大学ももっと上の大学に入学しており、途中で退学なんてしない真面目街道を突き進んでいたかもしれないが、今はそれはいい。
さて、そんな俺がなんでこの高校を選んだのかと言えば、地域の高校の中で女子のスカートが一番短いからだ。
周辺の高校が膝が隠れるのが規定の長さだったのに対して、この高校は膝上が規定。
更に付け加えるならば、男女の比率が女子が多い。
中学を卒業しても童貞で、むしろ彼女すらいたことがない俺にとっては、高校でそういったことが起こることを期待していた。
全ては彼女を作るため。もっと言えばモテるため。年頃の男子が考えそうなことである。
そんなわけで、中学の頃に入っていたバスケ部を続けたのもなんとなくかっこいいから。
「なんでもっと上目指さなかったの?」
という疑問も、
「中学の頃の先輩がいたから」
と変に説得力がある、とってつけたような理由をつけてかっこつけていた。
そんな煩悩の塊のような俺が、彼女と出会ったわけだが、それで考えが変わったわけでもない。
「むっちん」
彼女が俺を呼ぶ時のあだ名だ。
彼女だけが俺のことをむっちんと呼ぶ。
「今日、全面使う?」
全面とは、部活で体育館の全てのコートを使う予定があるのか。ということだ。
彼女は女子バスケ部。
俺は男子バスケ部。
当たり前に顧問は違うし練習内容も違う。
そして、彼女――高山ゆり――は女バスのレギュラーというわけではない。
男バスが全面を使えば、少しでも自分たちの練習が楽になる。そういう理由からよく聞いてくる。
なぜ、俺に聞いてくるのか?
俺がバスケ部のエースで自分が練習内容を決めているから――ではない。
3年の先輩の引退試合は6月だ。
顧問の先生はいないに等しい。(とゆーか、バスケを知らない)
3年の先輩が、不良だらけのため、バスケ部の顧問をやりたがる先生がいないのだ。
そして、そんな怖い先輩がいるからか、2年生はいない。
つまり、3年生が引退したらすぐに自分たちの世代となる。
加えて自分たちは4人しかいない。
バスケは5人でするものだというのに……
とまぁ、そんなわけで先輩が引退してからは、自分たちで練習内容を決めているわけだから、全面使うかどうか聞いてくるというわけである。
日常会話なんてこの程度。
それでも俺は彼女に惚れていった。
俺はそれでも好きだったのだ。彼女のことを。
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