第3話 練るアイスがあるらしい

コンビニの店先で、僕が「健斗がよくわからない味を買ってきたぞ」と笑いながら二人にアイスのカップを見せる。


「ほうじ茶きなこ? ……全然イメージできない味だね」


陽葵はそう言って笑いながら、健斗に「ナイスチョイス!」と親指を立てた。


健斗は空になった財布を悲しそうに眺めながら、「お残しは許しまへんでー!」と某アニメキャラの真似をしておどけてみせる。


恐る恐る食べてみると、これが意外とうまかった。僕が絶賛していると、隣で栞が「このアイス、練ったほうが美味しいらしいわよ」と、自分の食べかけの抹茶味のスプーンで僕のアイスを混ぜ始めた。


「あ、少し抹茶も混じったけど、めちゃうまい!」


僕が笑うと、陽葵は自分のスプーンで、僕と栞の食べかけが混ざったアイスを掬い取って口に運ぶ。


「んーっ、美味しいー!」


陽葵は顔をほころばせ、眩しい太陽のような笑顔を浮かべた。 


その光景は、今の関係が間違っていない証明のように思えた。


少し離れたところでスマホをいじっていた健斗が、茶化すように言ってきた。


「……お前らさ、たまに距離感おかしいよな」


すべてが普通で、すべてが完璧だった。


この歪なバランスを保ったまま、幸せな時間が永遠に続いていくのだと、僕は信じて疑わなかった。


――あんなに眩しかった彼女の笑顔が、

あんなふうに曇ってしまう日が来るなんて。



この歪なバランスを壊すことは、

きっと、間違っているのだと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る