第4話 【飯テロ回……の予定でした】王族の歓迎会で「石(パン)」を出されたので、ブチ切れて農業革命を起こすことにした

​ 軍師就任の翌日。

 俺こと相馬カズヤは、王城の食堂でナイフとフォークを握りしめ、涎(よだれ)を垂らさんばかりに待機していた。

​ 昨日は国を救ったのだ。セシリア姫も「最高の歓迎を用意します!」と言っていた。

 王族の食事だぞ?

 肉汁したたるステーキか? 新鮮な魚介のソテーか?

 想像するだけで胃袋が歓喜の歌を歌っている。

​「さあ、カズヤ様。我が国が誇る精一杯の料理です! どうぞ召し上がってください!」

​ 満面の笑みの姫と共に、銀の皿が運ばれてくる。

 さあ、来い! 俺のメインディッシュ!

​「……姫様。これは?」

​ 俺は目の前の物体を凝視した。

 そこにあるのは、どう見ても「黒い石」だ。

 河原に落ちていたら誰もが見過ごす、拳大のゴツゴツした塊が二つ。

 横には、具のない茶色いお湯(スープ)。以上。

​「え? ですから、パンと野菜のスープですが……」

「パン……? これが?」

​ 俺は恐る恐る、その黒い塊を手に取った。

 重い。密度がおかしい。中性子星か何かか?

 試しにテーブルに軽く叩きつけてみる。

​ ゴンッ!!

​ 鈍い音が響き、頑丈なオーク材のテーブルが少し凹んだ。

 俺は戦慄した。

 これはパンではない。鈍器だ。攻城兵器の弾薬として投石機(カタパルト)に乗せるやつだ。

​「……これをどうやって食べるのですか? 俺の知る限り、人間の顎(あご)は石を砕くようには進化していないのですが」

​「ふふっ、カズヤ様は冗談がお上手ですね。こうやって、スープに浸して、十分ほど待ってから食べるのです」

​ セシリア姫はニコニコしながら、その鈍器をスープに水没させた。

 ふやけた表面を削り取って食べるらしい。離乳食かよ。

​ 俺は絶望した。

 この国、軍事力が低いだけじゃない。食文化も終わってる。

 現代日本人の俺に、こんな「ふやけた石」を毎日食えだと?

 三日で発狂して脱走する自信がある。

​「(……いや、待てよ)」

​ ここは王城だ。いくらなんでも貧しすぎないか?

​「姫様。王家でこの食事ということは……民たちは?」

​「……はい」

​ 姫の笑顔が曇る。

​「凶作続きで……。それに、食料輸入を独占している『商業ギルド』が価格を吊り上げているのです。民たちには、この黒パンすら行き渡らなくて……」

​ ――商業ギルド。

 その単語を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。

 単なる貧困じゃない。人為的な搾取だ。

 足元を見て、俺の快適な食生活を阻害している敵がいる。

​ 俺は黒パンを睨みつけた。

 この硬さは、混ぜ物をしている証拠だ。こんなゴミを高値で売りつけてくる連中がいるわけだ。

​「……許さん」

​ 低い声が漏れた。

 正義感じゃない。食い物の恨みだ。

 俺の舌を満足させない奴は、魔王だろうが商人だろうが殲滅(せんめつ)対象だ。

​「カズヤ様?」

「姫様、俺に内政の全権を預けてほしい」

​ 俺は立ち上がり、黒パン(鈍器)をテーブルに突き立てた。

​「約束しよう。一年以内に、こんな石っころじゃなく、もっと柔らかくて美味いパンを……いや、黄金色の料理を腹いっぱい食わせてやる」

​「そ、そんな魔法のようなことが……!?」

「魔法ではない。『知識』だ」

​ 歴史オタクを舐めるなよ。

 中世レベルの農業技術しかないこの世界に、近世ヨーロッパの「農業革命」を持ち込んでやる。

 そして、現代の「ジャンクフード」の味を教えてやる。

​「まずは手始めに、国中の『ゴミ』を集める」

「ゴミ……ですか?」

「ああ。それと、あのギルドとかいう連中にも宣戦布告だ。『商売敵(ライバル)が登場したぞ』ってな」

​ 姫と兵士たちはポカンとしている。

 まさか、新任の軍師様が最初にやる仕事が「堆肥作り(ウンコ拾い)」だとは夢にも思うまい。

​ だが、俺は本気だ。

 待ってろよ、俺の愛するカロリーたち。必ずこの異世界に召喚してやるからな。

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