第8話 セシルの山籠り

 セシルは一人、森の中に居た。

 時間は少し戻る。


「山籠りに行ってくる」


「そ? 気をつけてね?」


「もっと引き留めて欲しい」


「君が無計画に山籠りなんてしないだろう?」


「むふー!」


「お弁当はどうしましょう?」


 アンナもすぐ帰ってくるだろうと支度しようとするが、セシルは最低限の水と携行食で良いと言う。


「無理はしない様に」


「分かった」


 こうしてセシルの山籠りが始まった。

 まずセシルは魔法の使用を極力禁じた。

 精々、火を起こす程度だ。

 その上で得物はジョンに貰ったライフルとナイフのみとした。

 前回の王国魔法祭での魔力切れが許せない。

 何故、ジョンが自分にライフルを渡したのか考えてみる。

 一見すると適当だが全て計算づくだ。

 まず体力が持つなら弾切れが無い。

 いざと成れば棍棒代わりにも出来るが自分の体格では負けてしまうだろう。

 ならば距離を取っての銃撃戦が一番生存率が高い。

 弓矢より早く獲物に到達する武器として渡されたのだ。

 と言う事は正確な射撃技術が要求される。

 今回、それを身に付けるつもりだ。


「この衣装どうにかして欲しい」


 魔法少女の格好で山籠りをしなければ成らない事に自分で呆れる。

 まずは、止まった的目掛けてライフルを撃ってみる。

 当たらない。

 まず、ここからかとセシルは嘆息する。


「むふー!」


 暫く止まった的目掛けて撃つ訓練が続いた。

 ようやく当たる頃には、携行食が尽きて居た。

 食料調達もせねば成らない。

 最初は罠でウサギを狩った。

 物資の現地調達も暗部の時に身に付けている。


「久しぶり」


 肉にかぶりつく魔法少女の様子は滑稽だが、訓練は真剣そのものだ。

 まず、ぶつかった壁はやはり体力だ。

 この魔道具は魔力の代わりに体力を使うので、最初は精々、数発撃てば、もう息切れを起こす。


「鍛える」


 軍隊式の鍛錬で、ひたすら体力を鍛える。


「ジョンの為に!」


 いざと成ればジョンの盾に成っても構わないと思う程、セシルの愛情は深い。

 その愛に応えるかの様にメキメキと体力が鍛えられた。


「二十は撃てる!」


 そして、使ってて気づいたのだが別に一丁だけしか出せない訳でも弾が決まってる訳でも無いらしい。

 重さも殆ど感じない。

 気づけば二丁のライフルを両手に持ち的に命中させられるまでに成って居た。

 山籠りして幾日経っただろうか?

 ジョンとエメがくっついてたら撃ち殺すつもりだが、とにかく次は動く的だ。

 鳥を狙うも当たらない狐も当たらない。


「どうすれば……」


 これは数をこなす他無かった。

 一日的を外しては寝床に戻る日々が続いた。

 その内、獲物の未来が予測出来る様になって来る。

 極限の集中の中、ようやく獲物に当たり出した。


「良し」


 更に訓練を続けると外さない様にまでなったと同時に撃てる弾数も増えた。

 獲物を回収する最中ビックベアに襲われたが、一瞥もしないで撃ち殺した。


「最終仕上げに入る」


 確かな手応えを感じたセシルは、仕上げとしてゴブリンの集落を襲撃した。

 恐れを知らぬゴブリンは陸の津波、次々と襲い掛かってくるが、二丁のライフルで次々と始末して行く。


「今なら矢も撃ち落とせる」


 ライフルで矢を弾きながらゴブリンを殲滅した。


「任務完了」


 帰路に着いたセシルが家に到着すると、まず身体をアンナに拭かれた。

 みんな口には出さないが臭いが凄いのだ。

 ようやくキレイに成って、みんな口を開いた。


「おかえり」


「おかえりなさい」


「オラオラオラオラ!」


 一人おかしい人間が居るが締め切り間近のエメが奇声を発しながら執筆していた。


「ご飯」


「はいはい、すぐ用意しますからね」


 ようやくマトモな食事にありつけたセシルも満足気だ。

 すると眠気が来たらしく、ベットに潜り込んだ。


「さて彼女はどんな鍛錬をしたのか……」


「わかりませんが一ヶ月近く出てましたね」


「出来たー!」


「やれやれ騒が……」


 バンッ!


 ベットからエメの頭部スレスレに弾丸が飛んだ。


「やかましい」


「……はい」


「成る程……ライフルか」


「ライフルの訓練でしたら銃士隊の私でも指導出来ましたのに」


 アンナはそう言うが、セシルの目指す所は、それ以上だったのだろう。

 起きるなりジョンに模擬戦闘を申し込んで来た。


「私頑張った!」


「じゃあ僕は攻撃しないよ」


 魔法少女へ変身し両手にライフルを構える。

 ジョンが相手なので構わず狙い撃つ。


「凄い!」


「山籠りの賜物!」


 まるで踊る様に撃つ様にジョンも驚嘆する。


「これでおしまい」


「凄いですわ! セシルさん!」


 魔力切れの時の準備も万端と成ったセシルだったが、まだ物足りないと言う。


「偏屈の所に行く?」


「違う、近距離格闘をマスターしたい」


「それはライフルを併せた?」


「うん」


「分かった僕も協力しよう」


 そこから更にセシルの格闘術は洗練されて行った。

 魔法少女…あくまで魔法使いでは無く魔法少女としてのセシルが完成した。


「凄いですわ…私も同じ魔法少女として!」


「先生は執筆頑張ってね」


「う〜締め切りが憎い〜」


 売れっ子漫画家として締め切りがキツイ。

 しかし、今のセシルを見て閃いたらしく、新キャラを追加する事にしたらしい。

 因みにアンナは既に追加されている。













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