第3話:初めてのスキル確認
「……勝った……?」
剣を下ろし、深呼吸する。
初めての実戦。初めての魔物との戦い。
そして——初めての勝利。
心臓が、まだ激しく鼓動している。アドレナリンが体中を駆け巡っている。でも、不思議と興奮よりも冷静さが勝っていた。
(俺が……魔物を倒した……)
信じられない。
地球では、同級生一人にすら勝てなかった。暴力を受けても、抵抗すらできなかった。ただ、耐えることしかできなかった。
それが今——
2メートルもある魔物を、一人で倒した。
「やった……やったぞ……!」
拳を握りしめる。
手が震えている。でも、それは恐怖ではない。喜びと、達成感と、そして——
(俺にも、できるんだ)
自信。
生まれて初めて感じる、自分への自信。
「キュルルル!」
リューイが、嬉しそうに俺に飛びついてくる。
小さな体で、俺の胸に飛び込んでくる。
「キュゥゥ♪ キュルルル!」
まるで、「すごいよ! かっこよかったよ!」と言っているかのように、何度も鳴く。
「ありがとうな、リューイ」
リューイの頭を撫でる。白銀の鱗が、柔らかく光を反射する。
「お前がいてくれたから、頑張れたよ」
「キュゥゥ♪」
リューイは、俺の手に顔を擦り寄せてくる。
その仕草が、愛おしい。
***
そのとき——
ピロリン♪
耳に、心地よい音が響いた。
同時に、目の前にウィンドウが現れる。
+++
【レベルアップ!】
レベル1 → レベル5
【スキル熟練度上昇】
・武神術 Lv1 → Lv3
・究極鍛冶 Lv1 → Lv2
【ステータス上昇】
HP: 100 → 500
MP: 100 → 500
STR(筋力): 10 → 50
VIT(体力): 10 → 50
AGI(敏捷): 10 → 50
INT(知力): 10 → 50
DEX(器用): 10 → 50
LUK(幸運): 10 → 50
+++
「お、レベルアップした!」
しかも、一気にレベル5まで上がってる。
ステータスも、全部5倍になってる。
「初戦闘でこれなら、結構順調かも……」
それに、スキルの熟練度も上がっている。
武神術はレベル3、究極鍛冶はレベル2。
「使えば使うほど、スキルも成長するのか……」
RPGゲームみたいだな、と思う。
でも、これは現実。俺の新しい人生だ。
魔物が消えた場所に、何か光るものが残っている。
近づいてみると——
小さな魔石と、銀貨が数枚落ちていた。
魔石は、黒く濁った宝石のよう。手のひらに乗るサイズで、中で黒い霧のようなものが渦巻いている。
銀貨は、地球の硬貨とは違う。片面に剣と盾の紋章、もう片面に「5」という数字が刻まれている。全部で5枚。
「これが、ドロップアイテムか」
ゲームでよくあるやつだ。魔物を倒すと、アイテムや金が手に入る。
魔石と銀貨を拾い上げる。
「そういえば、【究極時空間操作】には異空間収納の機能があったな」
試しに、念じてみる。
「アイテムボックス、オープン」
すると——
目の前に、別の青いウィンドウが現れた。
+++
【異空間収納】
容量:無限
現在収納中:なし
+++
「無限……すげぇな」
手に持っていた魔石と銀貨を、ウィンドウに向かって投げてみる。
すると——
シュゥゥゥ……
魔石と銀貨は、ウィンドウの中に吸い込まれた。
まるで、水の中に石を落としたように、波紋を作りながら消えていく。
そして、ウィンドウの表示が変わる。
+++
【異空間収納】
容量:無限
現在収納中:
・ブラックウルフの魔石×1
・銀貨×5
+++
「マジで入った……! これ、超便利じゃん!」
重い荷物を持ち歩く必要がない。食料も、水も、武器も——全部、この中に入れられる。
「よし、次の魔物を探そう。もっと強くならないと……」
「キュルルル!」
リューイも、やる気満々だ。
***
森の中を、さらに進んでいく。
リューイは、俺の肩の上に乗っている。軽いし、温かいし、何だか可愛い。
「お前、本当に龍なのか? めっちゃ可愛いんだけど」
「キュゥゥ♪」
リューイは、嬉しそうに鳴いた。尻尾を俺の首に巻きつけて、バランスを取っている。
歩きながら、自分のステータスを確認してみることにした。
「ステータスオープン」
すると——
目の前に、詳細なウィンドウが現れた。
+++
【皇 奏多(すめらぎ かなた)】
種族:人種
性別:男性
年齢:17歳
レベル:5
HP: 500/500
MP: 500/500
STR: 50
VIT: 50
AGI: 50
INT: 50
DEX: 50
LUK: 50
スキル:
・究極鍛冶(アルティメット・フォージ) Lv2
・究極時空間操作(アルティメット・クロノスペース) Lv1
・神体(ディバイン・ボディ) Lv1
・武神術(マーシャル・アーツ) Lv3
称号:なし
所持金:銀貨5枚
+++
「レベル5で、全ステータス50か……これって、強いのかな?」
比較対象がないから、よく分からない。
でも、さっきの魔物を倒せたんだから、少なくとも弱くはないはずだ。
「スキルも、ちゃんと全部ある……」
地球では、スキルが一つもなくて絶望していた。
それが今——4つも持っている。
しかも、全部「究極」とか「神」とかいう、明らかにヤバそうなスキルばかり。
「女神様……本当に、ありがとうございます……」
空を見上げて、心の中で感謝する。
***
「そういえば、【究極時空間操作】の時間操作、まだ試してなかったな」
さっきは異空間収納だけ使ったけど、このスキルにはもっと色々な機能があるはず。
周囲を見回す。ちょうど、目の前を一匹の蝶のような生物が飛んでいる。
羽は虹色で、ゆらゆらと優雅に飛んでいる。
「あの蝶を対象に……時間、減速(スロウ)!」
念じた瞬間——
蝶の動きが、スローモーションのようにゆっくりになった。
羽ばたきが、ゆっくり。飛ぶ速度も、ゆっくり。
まるで、ビデオの再生速度を遅くしたように。
「おおっ!?」
蝶はゆっくりと羽ばたき、ゆっくりと空を飛んでいく。
でも、蝶自身は気づいていないようだ。自分の時間が遅くなっていることに。
「すげぇ……本当に時間が遅くなってる……」
今度は逆に。
「時間、加速(アクセル)!」
すると——
蝶の動きが、一気に速くなった。
羽ばたきが高速になり、まるで早送りのように、あっという間に飛び去っていく。
ビュンッ!
一瞬で、視界から消えた。
「これ、戦闘で使ったらめちゃくちゃ強いじゃん……!」
敵の時間を遅くして、自分は普通に動ける。
それだけで、圧倒的に有利になる。
興奮しながら、次々と試していく。
空間転移——念じるだけで、10メートル先に瞬間移動できた。
空間切断——手を振るだけで、空間に亀裂が走った。木の枝を狙って試したら、スパッと切れた。
時間停止——これはまだできなかった。MPを大量に消費するらしく、今の俺のレベルでは無理みたいだ。
「でも、いずれは使えるようになるはずだ……」
スキルレベルが上がれば、もっと色々なことができるようになるだろう。
「やばい……こんな力、俺に使いこなせるのか……?」
でも同時に——
(この力があれば……もう、誰にも負けない)
そんな自信が、胸の中に芽生えてきた。
***
「キュルルル!」
リューイが、何かを見つけたように鳴く。
「どうした?」
リューイが指差す方向を見ると——
小さな泉があった。
透明な水が湧き出ている泉。周囲には、青い花が咲いている。
「水……!」
喉が渇いていたことに、今更気づく。
戦闘で汗をかいたし、ずっと歩いていたし——
泉に近づき、水を手ですくって飲んでみる。
ゴクゴクゴク……
「うまい……!」
冷たくて、清らかで、甘い。
地球の水道水とは、比べ物にならない美味しさ。
リューイも、泉の水を飲んでいる。
「キュルルル♪」
満足そうに鳴く。
水を飲んで、一息つく。
泉のほとりに座り、周囲を見回す。
ここは、森の中の小さな空き地。木々に囲まれていて、静かで、穏やかだ。
鳥の鳴き声が聞こえる。風が、優しく吹き抜けていく。
「……平和だな」
地球では、こんな平和な時間なんてなかった。
学校では、いつイジメられるか分からない緊張感。
家では、家族に無視される孤独感。
常に、心が休まることはなかった。
でも、今は——
リューイが、俺の膝の上に乗ってくる。
「キュゥゥ〜ン♪」
リューイの体温が、温かい。
その温もりが、心を癒してくれる。
「お前がいてくれて、本当に良かった」
リューイの頭を撫でる。
「これから、一緒に頑張ろうな」
「キュルルル!」
リューイは、力強く鳴いた。
***
しばらく休憩した後、再び歩き始める。
今度は、少し開けた場所を目指す。森の中をずっと歩いているより、開けた場所に出た方が、人がいる場所を見つけやすいはずだ。
歩きながら、【武神術】の技を思い出してみる。
頭の中に流れ込んできた、無数の技術。
その中には、8つの基本技と、8つの奥義技があることが分かる。
「基本技は……」
・
・
・
・
・
・
・
・
「8つも基本技があるのか……」
そして、奥義技は——
初伝、中伝、皆伝、秘伝、奥伝、極伝、天伝、神伝——
8つの段階がある。
「今の俺は、まだ基本技しか使えないけど……いずれは、奥義も……」
想像するだけで、ワクワクする。
どんな技なんだろう。どれだけ強いんだろう。
「まずは、基本技を完璧に使いこなせるようにならないとな」
「キュルルル!」
リューイも、やる気満々だ。
***
さらに30分ほど歩いていると——
森が、少し開けてきた。
木々の密度が下がり、日の光が地面まで届いている。
「おお、開けた場所が見えてきたぞ」
そして——
遠くに、煙が見えた。
「煙……? ということは、人がいる……!?」
煙の方向へ、歩みを速める。
リューイも、興味津々で前を見つめている。
「キュルル?」
「ああ、人がいるかもしれないんだ。この世界のこと、色々聞かないとな」
期待と、少しの不安を抱きながら、俺たちは煙の方向へと進んでいく。
でも——
この時の俺は、まだ知らなかった。
この先で出会う少女が、俺の人生を大きく変えることを。
そして、彼女との出会いが、これから始まる壮大な冒険の第一歩になることを——。
森を抜けると、そこには小さな空き地があった。
そして、空き地の中央には——
傷だらけで倒れている、一人の少女がいた。
「おい! 大丈夫か!?」
俺は、少女に駆け寄る。
少女は、意識を失っているようだ。
エメラルドグリーンの長い髪。尖った耳。
エルフ——
そして、その体には、無数の傷があった。
「これは……ひどい……」
すぐに、【究極鍛冶】で布を作り、傷を手当てする。
少女の顔を見て——
俺は、息を呑んだ。
美しかった。
傷だらけでも、その美しさは隠せない。
(この子を……助けないと……!)
俺は、必死に手当てを続けた。
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