Op.Ⅷ "Con grazia"
夕食を終え、お礼に青年からのお願いで家の片づけを彼と一緒にをしていた。その時、外で銃声が聞こえた。私は反射的に驚いて本を落としかけてしまったが、彼は大きな音を決して出さないよう深刻そうな顔で私に伝えた。気付かれると、私たちも襲撃の対象になりかねないらしい。そして、この都市ではこれが当たり前なのだという。でもそれは、私の過去に通ずるものがあった。私は、気付いた時には自ら私の過去を彼に語っていた。
そして、彼は大粒の透明な涙を流し、こう言った。
"そういえば、名前を聞いてもいいかい?"
"エトワール。エトって呼んで。"
私は、自らをエトと名乗ることにもはや躊躇いは無かった。それは、今まで私が貰った唯一の名前だから。
そして、彼は私にこう聞いた。
"エト、一度だけ抱きしめてもいいかい。"
"うん。"
そうして、彼は泣きながら私を抱きしめた。私も、彼を抱きしめた。彼の気持ちが痛いほどに解るから。
それから夜が明け、彼はまた無理をして朝ごはんを作ってくれた。それも、昨日のようなスープとパンとソーセージであったが、どれも昨日とは少しだけ違っていた。スープはトマトスープになり、パンはトーストに、そしてソーセージはバジル入りの物になっていた。 また、頂きますを述べた後、2人で談話しながら朝食を摂った。 やはり暖かく、美味しかった。 そして彼にもまたこう言った。
"また、いつか。"
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます