第5話 力の正体
「火魔法——炎の槍!」
マイトの叫びと共に、空中に一本の槍が生まれた。
炎を凝縮したそれは、全長およそ二メートル。
近くに立っているだけで、肌を焼くような熱波が押し寄せる。
片腕を振り抜く。
次の瞬間、炎の槍は唸りを上げて岩山へと飛翔し、
轟音と共に岩盤の一部を吹き飛ばした。
「水魔法——氷の剣舞!」
淡い水色を帯びた十本の氷剣が、意思を持つかのように宙を舞う。
光を反射しながら、妖しく、美しく——そして危険な刃。
掌を頭上に掲げ、指先を岩山へ向けた。
氷剣が一斉に突き出され、
舞いながら岩肌へと突き刺さっていく。
「風魔法——竜巻!」
両腕を天へ掲げた瞬間、風が円状に広がり始める。
草原が唸り、空気が震え、轟音が耳を打つ。
渦巻く風を解き放つと、
竜巻はゆっくりと岩山へ進み、表面に無数の亀裂を刻んだ。
「土魔法——岩石崩し!」
地面が震え、砂と土が舞い上がる。
それらは一つに集まり、石となり、さらに巨大化していく。
直径三メートル。
その質量の塊が、岩山へと叩きつけられた。
——衝撃。
爆音と共に岩山は粉砕され、
砂煙が空を覆い尽くした。
「……やった」
思わず声が漏れる。
「やったよ、アルマ! 岩山を……粉砕した!」
胸の奥が、熱くなる。
確かな達成感。圧倒的な力を振るった実感。
魔族であるアルマと契約してから、
ボクの魔力は異常な速度で成長していた。
初級魔法しか使えなかったはずのボクが、
今では岩山すら砕く上級魔法を連発している。
喜ぶボクを横目に、アルマは黙り込んでいた。
「……私が教えたとはいえ」
ぽつりと呟く。
「完全に、想像を超えているわ。これは……おかしいレベルね」
困ったように眉を寄せ、
アルマはじっとボクの目を見つめた。
今日は学校が休みだった。
だから、村から遠く離れた山までやって来たのだ。
ここなら、全力で魔法を撃っても誰にも見られない。
そう思って、目の前の岩山に力をぶつけた。
「うーん……王国軍所属の一流魔法使いクラス、かしら」
その言葉に、ボクは目を見開く。
一流魔法使い。
実際に会ったことはないが——つまり、それは「強い」という事だ。
嬉しさがこみ上げ、頬が緩む。
「強いのは、確かに良いことよ」
アルマは続けた。
「でも……問題は理由よ」
「親が有名な魔法使いなら、まだ説明はつく。でも」
白いウサギの瞳が、真剣な色を帯びる。
「なんの変哲もない村出身のキミが、この力を持っている理由がないの」
確かに。
ボクは木こりの父と、手芸が得意な母を持つ、ただの村人の子供だ。
貴族でもなければ、魔法の家系でもない。
なぜ、村でボクだけが魔法を使えたのか。
なぜ、ここまでの魔力を持っているのか。
「大人はね、得体の知れない力を恐れるものなの」
アルマの声が低くなる。
「強さを探られ、もし……魔族と契約していることが知られたら」
背筋が、凍った。
確かに、そうだ。
初級魔法しか使えなかったボクが、
魔族と契約した途端に、上級魔法を操っている。
もし王国軍に知られたら——。
「ねぇ、マイト」
アルマが静かに言う。
「大人になるまで、この力は隠した方がいいわ」
ボクは、何度も、何度も首を縦に振った。
一気に疲労が押し寄せ、
ボクは腰を下ろす。
お母さんが作ってくれたお昼ごはんを取り出した、その時だった。
「キャーーーーー!」
胸を貫くような悲鳴。
——妹の声だ。
「サフィア……!」
考えるより先に、体が動いた。
ボクは叫び声のした方へ、全力で走り出した
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