第31話

📘 第31章:交わるgenius



(このコードが、あんたの叫びだっていうのか――?)



2050年、NOISE仮拠点。


ホログラムモニターに無数のコードが滝のように流れ続けていた。

青白い光が佳乃の頬を照らし、冷たい会議室の空気に緊張だけが漂っている。


「……ここも塞がれたか……!」


佳乃の指先がキーボードを打つ音だけが響く。


RE:CODE本部への正面突破は不可能だった。

ならばと彼女は、古い地方行政区、更新の遅れた教育委員会、福祉機関、地方裁判所と、最新暗号システム未導入の端末群へと侵入経路を広げていった。


その時だった。


《help.f》


(……またhelpファイル……?)


続いて次々と出現する【help.○】ファイル群。


しかし、help.fファイルだけが、わずかに暗号署名構造を違えていた。



「……おかしい……」


佳乃は眉をひそめ、即座に解析スクリプトを走らせた。


すると、一行のコマンド列が浮かび上がる。


《ssh-rsa-REVERSE-TUNNEL-KEY》


(逆向きsshトンネル……!?)



画面の奥に現れたのは、一つの接続先IPだった。

RE:CODE外縁のバックアップサーバー。


佳乃は無言でアドレスを叩き込む。


(あんた……これ……私に見つけさせるために……)



接続までの残り時間がカウントダウンされる。


《接続まで…10…9…8…》


背後で真田が低く問いかけた。


「……誰と繋がるんだ?」


「……天才と。」


佳乃は目を細めた。


《3…2…1…接続確立》



──画面が切り替わった。


暗い室内。

褐色の長髪を一つに結んだ人物が、モニター越しにこちらを見つめていた。


28歳、ミカゲ ハヤト。

RE:CODEシステム暗号設計責任者。

そして、かつて唯一無二のライバル。



「……お前か。」


顔は暗くて分からない、声も加工したある、しかしその瞳だけが微かに揺れる。


「……何やってんだよ、こんなとこで……」


佳乃の声が震えた。



「……妹が……ここにいる。」


短く吐き出すように言う。


佳乃は拳を握り締めた。


(やっぱり……国家に……!)



その時、モニター右上に赤い警告が点滅した。


《通信遮断まで 10sec》


「チッ……遮断来る……!」


舌打ちする佳乃。


ミカゲは、一瞬だけ視線を落とし、そして淡々と呟いた。


「……0x4F1C矩形……お前なら解ける。」



《5sec》


(0x4F1C……矩形換字……あの時……あいつが唯一私に教えた……!)



《2sec》


「……待ってろ、ミカゲ……!」



《通信終了》


画面は無慈悲に黒く閉じた。



佳乃は深く息を吐き、かすかに笑みを浮かべる。


「……上等じゃん。取り戻してやるよ……あんたも、あんたの妹も。」




🔚 第31章・完

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