第38話 海①
あの日と同じ、大画面の前で私はサクラを待っていた。あの日と違うのは、私がおしゃれをしているってことかな。あんなにおしゃれなんかしたくなかったたのに、今ではサクラと二人のときは絶対スカートを履いている。今日はサクラとデート。私とサクラのデート。
「アザミ、お待たせ」
声がした方を向くとサクラが立っていた。今日のサクラはあの日と同じように、いつもとは違う、デートのためのおしゃれをしてくれていた。あの日とは違って私のために。サクラは私の元まで近づいてきた。サクラははにかみながら私に感想を求めてきた。
「アザミ、どうかな?」
「可愛い」
私は素直に答えた。
「アザミも可愛いね」
サクラに褒めてもらえた。
「ありがと。やっぱりまだ恥ずかしいけどね」
「じゃあ、行こうか」
「うん」
私はサクラと一緒にバス停に向かった。
水族館に着いた私たちは早速館内に入っていた。
「今日もイルカショーは絶対に見ようね」
サクラは笑いながら私に聞いてきた。
「そうだね」
「またアザミに守ってもらいたいしね」
「今日はオレンジの席には座りません」
「えーなんでー」
サクラは口を尖らせた。私は一人で順路の階段まで向かった。
「座りません!ほら、順路に従って!」
「はーい」
サクラも私についてきてくれた。
一度来ているはずなのに私にはすべてが新鮮に見えた。相変わらず館内は暗いな。あのときは緊張し過ぎて何も見えてなかったな。ここにこんなに水槽あったっけ。どの水槽も綺麗。私は一つ一つに足が止めて見入っていた。
「アザミ、やっぱり綺麗だね」
サクラが話しかけてきた。そのサクラの顔がすごく綺麗に感じた。
「うん…」
私はサクラに見惚れて簡単な言葉がしか出てこなかった。私は今、サクラとデートをしてるんだ。
先に進むと亀のいる水槽があった。あそこの亀は覚えている。
「アザミ、やっぱりこの亀ずっと私たちと目が合うね」
サクラが私を見ながら笑っている。
「もしかしてサクラのことを覚えてるんじゃない?」
「本当?じゃあ写真一緒に撮ろうかな。アザミも一緒に」
「いいよ」
私はサクラの隣に移動した。サクラがインカメを構えた途端亀は後ろを向いてしまった。
「急になんでよ!」
サクラが突っ込んだ。
「亀さん、写真は恥ずかしかったんじゃない?」
「もー何それ。亀さんバイバーイ。アザミ先に進もう」
サクラは亀の水槽から離れた。
この先は本当に何も覚えていない。もう野外に出るのかな。先に進むと、壁一面に描かれた魚の絵が描かれた通路になっていた。絵は明かりに反応して綺麗に光っていた。その通路は今までとは違う薄暗さと魚の絵と光で幻想的な空間になっていて、思わず私は足を止めた。
「すごい…」
「アザミ、すごい初見の反応じゃん」
サクラが私を見つめている。
「あ…それは…」
私が言い淀んでいるとサクラが私の手を取った。
「この先はもっと綺麗だよ」
サクラに手を引かれながら通路を抜けると目の前には階をまたぐほど大きな水槽があった。その水槽の大きさに目を奪われた。しかしサクラはその場に止まらず先に進んでいく。
「アザミ、下から見ると綺麗だよ」
私はサクラに何も言葉を返せず、ただ、サクラに手を引かれながら歩くだけだった。その間私はサクラの後ろ姿だけを見ていた。
「ほら、アザミ」
サクラが私から手を離し、立ち止まった。ここから見ればいいのかな。私は水槽を見上げた。下から見る水槽は上からの薄明かりが水面から照らされていて、神秘的な光景になっていた。
「綺麗…」
上から見るのとは全然違う。水槽を下から見ているのもあるのかな、まるで海の中にいるみたい。この光景が綺麗で水槽に惹き込まれる。私はしばらくの間水槽を眺めていた。ふと私の左手に温もりを感じて、隣を見るとサクラが静かに微笑んでいた。
「私のこと、忘れてたでしょ」
サクラに言葉を返すことができない。サクラの顔が本当に綺麗で、私はサクラから目を離すことができなかった。今、サクラに対しての気持ちがいつもとは違った。いつも感じている好きとは違った、なんて表現すればいいんだろう。いや、私はこの感情に一度なったことがある。いつだったっけ。そうだ、夜景を見に行った日の図書館のときだ。あのときサクラに信じてって言われたときと同じ感情。この感情は多分…私はサクラのことを愛おしいって思っている。
一通り水族館を堪能した私たちはレストランで休憩していた。サクラは目の前の水槽を見ている。
「アザミ凄いね、レストランでもイルカが見れるよ」
「本当だね。あ、今イルカが跳んだよ」
「嘘!見逃しちゃった!もう一回跳んでくれないかな」
サクラが食い入るように水槽を見ていた。その様子が可愛くてついサクラに突っ込んでしまった。
「イルカが跳んでいるところはさっき見たじゃん」
「ショーとはまた違うよー」
サクラは水槽を見ながら返事をした。これはイルカがまた跳んでくれないと、サクラが水槽から離れられないな。私の願いが通じたのかイルカはすぐにまた跳んだ。サクラは嬉しそうに私の顔を見た。
「アザミ!跳んだ!」
「よかったね」
サクラは満足そうな顔で頼んだアイスを食べていた。私はサクラが食べ終わるのを待っていた。サクラはアイスを食べ終わり、私に話しかけてきた。
「アザミ、今日は楽しかったね」
このままだと今日はこれで終わる。でも私の本当の目的地はここじゃない。私は勇気を出してサクラに聞いた。
「サクラ、この後まだ時間ある?」
「あるよー!」
私はひとまず安堵した。
「サクラ、この後寄りたいところがあるんだけど、いいかな?」
「もちろんだよ!」
よかった。私がサクラに自分の気持ちを伝えるならあそこしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます