不安分子として隔離されたので、魔王に与することにした
¿?
第1話 いつもと同じ
母さんはホストに溺れて、聞きたくもないホストの話を延々と垂れ流すイカレ女。
父さんはギャンブル中毒で酒浸りのクソ男。
金がなくなると、殴る。理由はだいたいそれ。
そんな両親の元で育って、まともになると思えるならそっちの頭を疑う。
結果、イカれたクソガキが完成。
「—それが俺ってわけ」
確か、親について語る授業だったか。
逃げ場所がなくて、教師にも呼び出されてて。
色々重なって久しぶりに教室に行った。
そこでこの話をしたら、教室が一瞬死んだみたいに静かになった。
他のやつはさ、愛妻家の父親だとか子供が大好きな母親だとか。
聞いてるだけで腹いっぱいになる話ばっか。
俺だけ、異物。
最初から歪んでて。
最初から壊れてた。
それだけの話。
それからどうしたんだっけ。
なんか視界がチカチカして、誰か叫んでた気もする。
でも聞こうとするのも面倒で。
考える前に意識が途切れた。
それで気づいたら異世界に召喚されてた。
周りを見れば危機感が欠片もないのか、もう祝勝会でも始めそうな勢いのアホばっか。
ため息をする。
「おお、成功したぞ!! 我らが勇者様方だ!!」
祭壇みたいな場所に立ってるいかにも偉そうなじじいが何かを言っている。
どうでもいいことでしかない。
「我らの世界をお救いくだされ、勇者様!!」
「いや、普通に無理。帰せよ」
あ。
口から出た。
空気が一気に冷えた。
クラスメイトからの視線が突き刺さるが、正直どうでもいい。
被っていたパーカーのフードを下ろして、ポケットに入れていた手を片手だけ出す。
かったるいのは嫌いだ。
面倒なものは全部、この世から消えればいいってずっと思ってる。
なのに変な世界に連れてこられて、勇者だの、救えだの。
身勝手にもほどがある。
傲慢が過ぎるだろ。
神にでもなったつもりかよ。
「まぁまぁ、落ち着きなよランくん」
クラスメイトの一人に名前を呼ばれ止められた。
でも。
「誰だっけ、お前」
おでこに手をあてて項垂れるソイツを放置して祭壇の男に向かって歩いていく。
一歩踏み出すたびに神官どもはざわつく。
ざわつくだけで、誰も何もしない。
俺というか俺たちに手を出せない理由でもあるんだろ。
滑稽なことだ。
ナイフに手をかけそのまま抜いた。
「なぁじじい。ここ、血で汚れるけど?」
じじいの合図で、周りの神官が今更動き出した。
俺を拘束しようとしてるらしい。
おっせぇな。
脳も身体も。
神官が俺の肩に触れた。
ナイフを反射的に何度か振った。
肩に触れてた神官はべしゃりと崩れ落ちた。
血を噴き出して。
血に慣れてないクラスメイトは悲鳴をあげていたがそれはどうでもいい。
少し鬱陶しいがあとで黙らせればいい。
それよりも今は。
「……ん? ナイフこんなに当ててないんだけど。殺すつもりもなかったし」
おかしい。
殺すつもりじゃなくて手を切り落とすつもりだったのに。
間違えて殺した。
こんなミス、ガキじゃあるまいし。
「……鑑定しろ。シスター」
じじいが低く命じると、近くにいた女が俺の手を握った。
振りほどこうとしたが、このシスターの握力がおかしい。
ゴリラかよ。
「鑑定完了。……あら、珍しいわね。<必中>持ちだなんて」
「いってぇ。ゴリラかよてめぇ。手形残ってるんだけど」
「あら女性にゴリラだなんて失礼な」
じじいは顎に手を当て数秒だけ考えるそぶりを見せた。
ならそんな茶番いらねえだろ、と思ったのも束の間。
背後から腕を掴まれた。
騎士が俺を拘束する。
「地下に連れていけ」
騎士に引きずられる。
クラスメイトの一人が目線を俺からそっと逸らした。
それが答えだった。
大丈夫だ。
いつもと同じ。
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