バズった配信の正体が、家にいた居候だった――ランキング一位は、正体を隠して平和を謳歌する

しろん

第1話

「はぁ……こんなんじゃ楽しめないな、まぁ目的は達成できたし良しとするか」


身体の部位が欠損して動かない屍になった魔物に囲まれながら、呼吸一つ乱れてない十六歳になったばかりの少年が一人立っていた。



ダンジョンと呼ばれるものが、今から三十年前に現れた。ダンジョンが現れた当初は世界中が大混乱になって大変だったらしい。詳しいことは知らないけど。俺はその時代に生きてなかったし、それに訳あって俺は中一で勉強が止まってるのと高校にも通ってないからな。

そんな感じで、今のご時世じゃ学校終わりに高校生がバイト感覚で低級のダンジョンに稼ぎに行ったりしてる。低級ならパーティーを組めば簡単に倒せてお金が入るし、男子が好きな魔法も使える可能性があるから若者にも大変人気だ。


ダンジョン以外にも現れた物がある。それはどんな原理で投影されてるか不明だが空に探索者ランキングと呼ばれてるものが浮いている。この機能のせいで力の格差社会が問題になってたりする。俺はランキングに興味ないけどな。

そのランキングには自分で決めたニックネームとレベルだけ表示されてる。余談だがニックネームは最初に決めたら変更はできない、この機能を知らなかった人たちは中二病みたいな名前を付けて全世界に黒歴史を晒したらしい。


「よし、返り血は付いてないな」


ダンジョンから地上に戻りギルドを素通りして外に出る。空に浮かんでるランキング一位を忌々しく見る。半年前に突如現れバグみたいな速度で上昇していった今最も話題になってる謎の人物。名前は『あああああ』とか言うRPGゲーに付けそうな適当でふざけた名前だ。ただその名前の横には二位とは倍差もあるレベルが表示されていた。


「あーもうっ……ほんと、なんで変更できないんだよ!」


ステータス

Lv600 灰葉翔はいばかける(あああああ)


HP:???

MP:???

筋力:???

防御:???

俊敏:???

魔力:???


スキル

???………



文字化けだらけで使い物にならないステータスを眺めながら名前の部分を何度もタップするがピクリとも反応しない。ステータスと格闘してるといつの間にか今の家に着いていた。


「ただいま帰りました~」

「おかえりなさい。バイト終わりだし汗かいてるでしょ、お風呂沸かしたから先に入っといて」

「ありがとうございます」


お風呂を勧めてきたのは家主の柊椿ひいらぎつばきさん。大学二年生で五年前に両親はダンジョンのスタンピードで亡くしたらしい。そんな人と何故一緒に住んでるかというと、血だらけの状態で道端に倒れてるところを拾われたからだ。


「ん~ダンジョン終わりの風呂は格別だなぁ」


ふと鏡に映る自分と目が合う。まだ中学生でも通る童顔に黒色が抜け落ちた白髪、黄金色に輝く左目。風呂以外では眼帯をしてるから騒がれることはないが世界中探しても見つからないような瞳の色をしてる。


「……色々と変わっちゃったな」


髪を摘まみながらため息を吐く。これ以上入ったところでしんみりするだけだと思い風呂から上がる。リビングに向かうとソファーでテレビを見てる椿さんがいた。


「お風呂ありがとうございました」

「はーい、それと毎日言ってるけどタメ口ってお願いしてるでしょ?」

「いやー毎日言ってますけど居候の身分でそんなことできないですよ」

「まったく、翔君は変なところで頑固なんだから!生活費もいらないって言ってるのに律儀に払ってさぁー」


子供みたいに頬を膨らませて抗議してくる姿は悪いがとても年上とは思えない。椿さんは綺麗な茶髪のロングで可愛いより綺麗が勝つ女性なだけあって仕草とのギャップが凄い。そんな彼女だが人気のダンジョン配信者だ、実力もあり見た目も良いので登録者も百万人を超えてる。実際の配信は見たことないが、何でも女性だけのパーティーで大学の講義終わりにダンジョンに行って配信してるらしい。

ダンジョン配信とは魔物との戦闘をカメラに流して視聴者に観てもらうコンテンツのことだ。


「そうだっ!明日の午後に配信するんだけど今度こそは見てよー明日はバイト入ってないんでしょ?」

「まぁー入ってませんけど、なんでそんなに見せようとしてくるんですか?」


椿さんには土木作業のバイトと言ってるが本当はダンジョンに入って魔物を狩ってることを教えてない。いや初めは教えようと思っていたがタイミングが悪く、今度でいいかと先延ばしにした結果いつの間にかランキング一位になってしまい、とても言いづらくなってしまった。


「そんなの決まってるでしょー翔君に私の凄さを知ってもらうことだよ!」

「そんなの配信観なくても椿さんが凄いのは知ってますよ」

「なっ……ふ、ふぅーん…そうなんだ知ってるんだ」

「そりゃーそうでしょ、家族を失って一人で生きてるだけで凄いのに見ず知らずの男まで住まわして正直な話、正気を疑いましたね」

「えへへ、そっか~……ん?なんか最後悪口言ってなかった?」

「気のせいですよ」


『現在世間を騒がしてる謎のランキング一位の正体とは!?』


うんうん悩んでる椿さんをほっといて現在ニュースで流れてる話がとても知ってる話題で気になる。コメンテーターの人が的外れなこと言ってる。なんだよシステムのバグってランキングシステムの仕組みすらまだ分かってないだろ。


「最近この話題ばっかだよねー」


いつの間にか素に戻っていた椿さんがテレビを見ていた。


「そうですね、本人もビックリしてるんじゃないですかね。こんな話題になるとは思ってなかったりして」

「それはないよー半年でランキング一位を取る異常なことぐらい今どきの小学生でも分かるでしょ」

「うっ…あははーそうですよね……ほんとに」

「あれなんで悲しそうなの?」


椿さんと話していたらいつの間にか次の話題に変わっていた。


『半年前に発見された非人道的実験を行っていたことを大臣が認めました』


「あーやっと認めたんだ……この事件は酷かったね」

「スタンピード中に人を攫って秘密裏に行われてた実験ですよね?」

「そうそう、人には猛毒の魔物の血を体に打ち込んで魔物のスキルを手に入れるとか狂ってる実験だね」

「………確か研究者は何者かに全員殺されてたんですよね」

「そうみたいだね、ただそれをやった人が誰か分かってないみたいだけどね。でも良かったよ、スタンピードで行方不明だった人たちが生きてて」

「………………」


魔物の血を打つと白血球が異物だと認識して攻撃してしまい、最終的には命を落としてしまう。それで死ねたらはまだいい方で中途半端に適合してしまったら最後激痛に苛まれ身体の一部が魔物に変化して苦しみながら死んでいく。


「あっもうこんな時間だ、夕飯作るけどカレーでいいかな?」

「はい、椿さんの料理は全部美味しいですから今回も楽しみです」


コメンテーターや司会の人たちが大臣やその研究に関わったものを批判してるのを聞きながらチャンネルを変えた。



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