死の呪いをかけられた姫君は自力で解呪を試みる

イオリ⚖️

呪いの始まり

 昔々むかしむかし、とある王国で待望の姫君が生まれた。


 姫君は産声を上げた瞬間からそれはそれは玉のように輝いており、歓喜に湧いた国王は国中の人々に金貨やご馳走を振る舞い、祝宴の席に名高い国内の魔女たちを呼んだ。


「ではお誕生のお祝いに、私からは徳のある綺麗な心を」

「わたくしは目も覚めるような美貌を」

「あたくしは富を授けましょう」


 健康、聡明さ、清らかな声……12人の魔女たちはそれぞれ最高の祝福を王妃に抱かれた赤子に贈る。


 祝福の内容に招待客が色めき立ち、12人目の魔女がいよいよ最後の贈り物を唱えようとした刹那、城中に不気味な声がとどろいた。


「よくもまああたしを差し置いてのんきに祝宴なぞ催したものよ。無礼のお礼にあたしからも贈り物をあげる。――――お前たちの娘は15年後、糸巻きのつむに刺されて死ぬだろう!」


 突如、城の大広間が真っ暗な闇に覆われた。轟音ごうおんをまとった稲妻が城のすぐ近くで落ち、照らされた人々の影が一瞬だけ床に縫い留められる。


 そして大広間の照明が何事もなかったかのように明るさを取り戻した頃には貴族たちはすでに半狂乱に陥り、お祭り騒ぎどころではなくなった。それまで健やかに寝入っていた姫君の泣き声が混乱のどよめきに紛れて響き渡る。


 そんな中、水を一粒打ったような、ほんの小さな足音が波紋のように静寂を広げ、人々の口を自然と閉ざさせた。


「皆様。落ち着きください。まだ私の贈り物を授けておりません」


 決して大きくはない、しかし人々の耳を惹きつける凛とした声。13人目の魔女の登場で出鼻をくじかれた、12人目の魔女だった。


「あの魔女の力は強大。私の力をもってしても打ち消すことはできません。ですのでこうしましょう」


 12人目の魔女は魔法の杖の先をくるん、と回す。


「姫君はつむに刺されて死ぬのではありません。眠りに就くだけです。時が来れば、運命の人が現れて口づけによって目を覚ますでしょう」


 努めて明るく出された声だが、内容はさして気休めにもならない。


 生まれたばかりというのに姫君に負わされた絶望的な運命と、王国の行く末に、誰もが暗い谷底へ引きずり込まれた。

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