小説のタネ置き場【ホラー・ミステリー】
@-ndA0lightsy
オノマトペのおかしなトモダチ
一〇分ほどのお時間があれば、聞いて下さい。
今から三年前の夏。
私が二十二歳の誕生日を迎えたその晩、共通の知人を通して、サワノ・アイミーと言う女性と知り合いました。
彼女はハーフでした。イギリス生まれの父と日本生まれの母の間に生まれたそうです。
英語を流暢に使いこなす反面、日本語は少し下手くそでした。
例えば、シャンパンを洋服へこぼしてまった時に「ぐちょぐちょになってしまった!」と言うんです。
正しくは「びちょびちょになってしまった!」ですよね。
でも、それも仕方ありません。両親の仕事の都合で、二十歳で初めて、日本へ来たみたいですから。
それまで、家庭内では日本語と英語の両方が混ざった会話をしていたみたいですけどね。
オノマトペに触れる機会が無かったんだと思います。
誕生日パーティーが終わっても、彼女とは度々遊ぶ仲になりました。
楽しい人でしたから。
半年が経った頃、彼女と私は初めて二人で遊ぶことになったんです。
「その日は、東京を案内して欲しい」と彼女が言ったので、何日も前からリサーチをして、予定を組みました。
私たちの家はかなり離れていました。
二人とも、当時は車を持っておらず、移動手段はいつも電車でした。
集合場所はとある駅にしました。その駅は丁度、二人の中間地点だったので。
(※個人情報がバレてしまうと怖いので、ここでは敢えて、このように表現させて下さい)
その日は晴れの予報でしたが、お昼を過ぎたころ時、サーっと通り雨が降りました。
傘を持っていない私たちは、雨宿りが出来るお店を探していました。
飲食街に居て、尚且つ、ごはんを食べた直後の出来事で、どのお店にも入りづらく。
しばらくの間、雨に打たれながら歩いていると、路地裏に入りやすそうなお店を見つけたんです。
(※特定出来てしまうので、店名は伏せます)
店舗は二階にあって、一階のテナントは潰れていた気がします。三階建てのビルにあるエレベーターは、メンテナンス中でした。
それで仕方なく、外に設置されていた螺旋階段を登って入店しました。
お客さんは私たち以外に見当たらず、店主も不在でした。
BGMが消えている店内に、どこか居心地の悪さを感じながらも、買う気がない商品を眺めていました。
しばらくしてから、彼女のスマホが鳴りました。
あまりに静かすぎる店内で電話することを躊躇ったのか、彼女は私に合図すると、店の外へ消えていきました。
そして数分後、彼女は少し興奮した様子で帰って来て、私に言ったんです。
「ぐちょぐちょになってしまった!」と。
私はそれを聞いたとき「また雨に濡れて、
だけど、どうも彼女の様子がおかしいのです。
私の腕を強く掴んで、外へ引っ張り出そうと必死な彼女を落ち着かせる為に「どうしたの?」と聞いてみました。
すると彼女は言いました。「男性が、三階から飛び降りて、ぐちょぐちょになってしまった!」と。
何を言っているのか理解できず……というより「実際にそうだったら?」と脳が理解することを拒んでいたのだと思います。
彼女に連れられるまま外へ出た私は、指差された地面を恐る恐る覗きました。
男性は居ませんでした。
ホッと胸を撫で下した時、視界上部へ大きな黒い影が映りました。
彼女の言った通り、
私はその瞬間に目を瞑りました。そして数秒後、下から悲鳴が聞こえました。
その後の記憶は抜け落ちています。
しかし、今でも思い出す光景が2つあるのです。
アスファルトの上の血液が、雨によってじわじわと広まっていく様子。
警察や消防隊が処理しきれなかったのであろう、飛び散ったピンクの塊。
アイミーとはそれ以降、遊んでいません。
彼女を見る度に、全てを思い出してしまう気がするから。
みなさんはこの話、信じてくださりますか?
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