ルミアと永久の塔
ハッチ
第1話
訓練場には、いつも同じ匂いがあった。
油と鉄と、焦げた金属の混じった匂いだ。
ただ、昨日の激しい爆撃のせいで今日はそれがことさら強く感じた。むせかえるほどだった。
ルミアが構えた銃が、横に滑るように弾ける。それと同時に、遙か先にある3つ並んだ的は全て砕けた。
「すごいな、ルミア」
ロックが目を見開いて言う。
「また射撃が上手くなったんじゃない?」
そう言いながら、彼も銃で的を狙い撃った。5回発砲音が鳴り響いたが的は砕けなかった。
「全然ダメだ。やっぱり僕には向いてないな」
「訓練次第よ」
ルミアが汗と土煙を拭いながら言う。
「私は、昔からリトに教えてもらっているから」
「僕だってリトから色々教わったよ。でもこのザマだ。ルミアには才能があるんだよ」
妬みや皮肉など一片も感じさせない、人懐こい笑顔でロックが言う。本心なんだろう。
しかし、ルミアはそれを嬉しいとは思えなかった。
「そういえば、リトは?」
「本部」
「そっか……また作戦会議かな。忙しいね」
ロックが基地のあるほうを見ながら言った。
「またさ、三人でご飯食べたりできないかな」
「しばらくは無理かもね」
「そうだよね……」
リトは、解放軍第56期でルミアとロックの同期だ。しかし既に階級は2つ違う。
彼は桁外れだった。
「……休憩時間になるわ。食堂にいきましょう」
「うん」
ルミアとロックは、黙って訓練所を後にした。
ルミアたちの所属する解放軍と絶対権力である帝国軍の戦争は、開戦して既に30年が経過していた。なので17歳の彼女たちは、この戦争が始まった時のことを知らないし、開戦の理由も知らない。それでも皆、生まれた時から戦うことを強いられてきた。
帝国は悪。解放軍は正義。
彼女らが幼い時から教えられてきた、唯一の真実。
ただ、その全てを疑問に思わないわけではなかった。
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