第10話共鳴 ── 魂の周波数
水晶の柱が奏でる「432Hz」の音色は、不思議なことに、侍が背負っていた太刀と共鳴し始めていた。
「……刀が、震えている?」
侍が太刀を抜くと、その刀身は普段の冷たい鋼色ではなく、温かな黄金色の光を帯びて脈動していた。
それはまるで、刀そのものが呼吸しているかのようだった。
「その刀は、ただの武器じゃないもの」
姫が、愛おしそうに光る刀身に触れる。不思議と手は切れず、指先から光の波紋が広がる。
「それは、貴方の『守りたい』という意志を増幅する鏡。……この聖域の音と同じ、愛の周波数でできているのよ」
「僕の……意志……」
侍は柄を握り直した。
これまで、この刀は敵を斬るための鉄塊だと思っていた。だが違ったのだ。
これは、姫を蝕む毒(絶望)を祓い、閉ざされた道を切り拓くための「光の杖」でもあったのだ。
「ワオーン!」
足元で、白い犬もまた、水晶の柱に向かって遠吠えを上げた。
その声はいつもの愛らしい鳴き声ではなく、腹の底に響くような、力強い倍音を含んでいた。
犬の鳴き声、水晶の音色、そして太刀の輝き。
三つの要素が重なり合い、ドーム全体がまばゆい光に包まれる。
「……行ける」
侍は確信した。
金剛の操る「恐怖」や「支配」という冷たい論理も、この温かな光の刃の前では無力化できるはずだ。
「ハリー、行きましょう」
姫が立ち上がる。その瞳には、もう迷いも恐怖もない。
「逃げるのはおしまい。……私たちが、あの『氷の将軍』に教えてあげるの。命の本当の強さを」
「ああ。……僕たちの愛で、帝国の闇を切り裂こう」
侍は黄金に輝く太刀を鞘に納めた。
守られるだけの逃避行は終わった。ここからは、運命への反撃(カウンター)が始まる。
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