第6話 光が告げるもの
魔力測定から、数日後。
ノクティス公爵家の屋敷は、どこか落ち着かない空気に包まれていた。
廊下を行き交う使用人たちの足取りは早く、声は自然と小さくなる。
(……そりゃそうだよね)
世界に一人しか存在しない光属性。
それが、よりにもよって公爵家の娘――しかも、生まれたばかりの赤子だと分かれば、こうなる。
私は今、母セレナの腕の中にいた。
柔らかな香りと、一定の鼓動が心地いい。
「緊張している?」
小さな声で、母が私に囁く。
(してるのは、周りの大人たちだと思う)
広間には、見慣れない人物が集まっていた。
正装を纏った騎士たち。
そして、明らかに“格”の違う存在感を放つ数人。
――王族だ。
(早すぎない?)
原作でも、光属性の存在が公に知られたのはもっと後だったはず。
それなのに、この世界では、すでに動き出している。
やがて、父――アレクシス・ノクティスが一歩前に出た。
「集まっていただき、感謝する」
その声は低く、よく通る。
公爵としての威厳が、自然と場を支配していた。
「先日の魔力測定により、
我が娘、ルクシア・ノクティスが――」
一瞬の、静寂。
「光属性の魔力を有していることが、正式に確認された」
ざわり、と空気が揺れた。
「……やはり」
「奇跡だ……」
「いや、運命か」
囁きが重なり合う中、
いくつもの視線が、はっきりと私に向けられる。
(……見られてる)
好奇。
敬意。
期待。
そして――値踏み。
その全てを、赤ちゃんの私が一身に受けている。
(これが、光属性の意味……)
癒やしの力。
希望の象徴。
国にとって、失ってはならない存在。
原作での私は、
この“特別さ”に押し潰されていった。
「……小さいのに」
ふいに、誰かが呟いた。
「こんなにも、か弱いのに……」
その言葉に、母の腕がほんの少しだけ強くなる。
「この子は、ノクティス家の娘です」
セレナの声は、静かで、しかし揺るがなかった。
「誰の所有物でもありません」
その一言で、場の空気が変わった。
父もまた、私の方へ視線を向ける。
「ルクシアは、我々が守る」
その言葉に、胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
(……ああ)
視線が集まる。
期待が集まる。
運命が、動き出している。
それでも。
この温もりだけは、本物だ。
(嫌われないように、って決めた)
でも、それだけじゃ足りない未来が、
もう、すぐそこまで来ている気がした。
――光は、祝福であり、呪いでもある。
そのことを、私はまだ、知らない。
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