第9話 真実の共有


朝の光が森を柔らかく照らす頃、

セリオ王子はリアナと共に小道を歩いていた。


「昨夜は、ありがとう」王子は少し照れた

声で言う。リアナは微かに笑みを浮かべ、

答える。


「無事でよかったです」森の葉が風に揺れ、

小鳥たちが囀る。二人の歩みは自然と

呼吸を合わせ、互いの存在を確かめるよう

だった。


「誤解してごめんなさい」リアナは言葉を

選ぶ。王子は微笑み、手を軽く振る。


「僕もだ。君に真実を伝えられずにいた。

でも、もう隠さない」胸の奥の重みが解け、

王子の声には清々しさが宿る。


森の奥の小川に到着し、二人は腰を下ろす。

水面に映る月光が朝日に変わり、銀色の光

が揺れる。王子はゆっくりと話を始めた。


「僕は……都で生まれ、王族として育った。

自由は少ない。責務が優先され、心の声は

抑えられてきた」セリオは視線を川面に落とす。


リアナは静かに耳を傾ける。王子の話には

初めて触れる素顔があった。森の外での責務、

孤独、誤解されることの恐怖。


「でも、森に来て君に出会い、自由に触れ、

心を開くことができた」王子は顔を上げ、

リアナの目を見る。


「リアナ、君に出会えて、本当によかった」

言葉に、心からの感謝と想いが込められる。

リアナの瞳が潤むのを、王子はそっと見つめる。


「私も……あなたに出会えてよかったです」

リアナの声は震えるが確かだった。

森の中で過ごした時間、冒険、秘密の訪問、

全てが二人の絆を育てたのだ。


「王国の圧力や兄の監視……」リアナは

少し目を伏せる。「でも、あなたは私を信じ、

守ろうとしてくれた」


王子は頷き、手を差し伸べる。リアナもそっと

その手を握る。触れた瞬間、互いの心が

静かに震える。友情から芽生えた感情が、

確かな愛情へ変わる瞬間だった。


「誤解はもうない」王子は静かに言う。

「互いに心を打ち明けた。これが真実だ」

リアナは深く息を吸い、笑みを浮かべる。


「ええ、真実だけが私たちを繋ぐ」

その言葉に、森の風が応えるように木々を揺らす。

光と影が水面に踊り、二人だけの時間が

永遠に続くかのようだった。


王子は肩を軽くリアナに寄せ、森の静寂の

中で互いの鼓動を感じる。リアナもまた、

心の奥で温かさと安心を感じていた。


「これからも、一緒に森を歩いてくれますか」

セリオの声には優しさと決意が混じる。


「はい」リアナは微笑み、王子の手を強く握る。

森の小鳥が囀り、風がそっと二人を祝福する

かのように吹き抜ける。


朝の光が二人を包み、誤解と不安は完全に

消えたわけではないが、真実の共有によって

二人の心は揺るぎないものになった。


「王族としての義務も、森の掟も、

君となら越えられる」王子は自分に言い聞かせる。


「私もあなたとなら、森の民として、

勇気を持てます」リアナは柔らかく答える。

互いの決意が、二人を一層結びつけた。


小川の水が光を反射し、森全体が輝いて見える。

二人の影が重なり、未来へ向かう道が

静かに示されていた。


友情を越えた絆、信頼を経て生まれた愛。

森の中で共有された真実は、二人の心を

確かに結びつけたのだった。

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