第17話
アメリは我が物顔でリリーの部屋のベッドに座っていた。フードを脱いだアメリが真っ直ぐにこちらを見つめていて、その顔はまるでここが自分の部屋であることを疑いもしない様子だ。
リリーは一瞬、自分が入る部屋を間違えたのかと思った。
「あ、貴女の部屋は隣でしょう? なんでこっちにいるのよ。何か部屋のことで気になることでもあった?」
「ない。」
あまりにも当然の様にそう答えるものだから、リリーは困ってしまう。一体何を考えて自分の部屋にいるのか、見当もつかなかった。だがすぐにニヤ~っと笑うと、冗談めかしてアメリに告げる。
「もしかして、私がいないから寂しくなっちゃったの? アメリったら、まだまだ甘えん坊さんなんだから!」
リリーは自分の発言を「くだらない。」と一蹴されると思っていたが、アメリは予想に反して考え込むように目を伏せる。
「そうではない。だが……。」
珍しく考え込むような素振りで暫く黙った後、アメリは静かに続ける。
「あの部屋にはリリーがいない。故に居る意味がない。」
「ええ……? 何よ、それ……。そんなの、」
そんなの、まるで―――私と一緒に居たいみたいじゃない。
リリーはアメリが、人と関わるのを好まない性分だと知っていた。村やアレン達と関わったときの様子からしてもそれは明らかであったし、あの小さな家で自分と一緒に過ごしていたのは、それ以外に選択肢がないからなのだろうと。
だがアメリの今の言葉は、アメリが自分の意思でリリーと居たいと望んでいるかのようだ。
アメリはきっとそんなつもりで言ったわけではないのだろうが、リリーは舞い上がる気持ちを抑えられなかった。愚かだと分かりながらも、思わず口から1つの問いが零れる。
「……アメリは、私のこと、好き?」
期待するような眼差しを、アメリは正面から受け止める。
「リリーの言う「好き」がどういうものなのか、我には理解出来ない。だが、我とお前は共にあるべきだ。」
アメリは噓をつかない。好きが分からないというのは好きが分からないという意味だし、リリーと自分が共にあるべきだという言葉にも嘘偽りはないだろう。
その言葉にリリーは悲しいような、やっぱり嬉しいような、複雑な気持ちになる。
だが、今はその言葉を受け止めるべきだろう。
リリーは無理やり笑みを浮かべるようとしたが、上手く笑えずに歪な表情になってしまう。リリーは慌てて俯くと、短く一言だけ「そうなのね。」と返した。
「―――そんな顔をするな。」
「え?」
「いつもの様に笑っていろ。その方が良い。」
やはり本心から発せられたであろうその言葉に、リリーは人の気も知らないで! と憤りを覚える。自分をこんな顔にさせているのは、他ならぬアメリなのに。
だが頬に手を添えて強制的に目を合わせられると、リリーは自分の中の怒りや悲しみがシュルシュルと縮んで消えていくのを感じた。
アメリに触れられるのが嬉しい。一緒にいたいと思ってくれているのが嬉しい。
これが惚れた弱みというものなら、なんて恐ろしいものなんだろう。
リリーは頬に添えられた手に自分の手を重ねると、今度こそいつもの様ににっこりと笑った。
「……うん。私も、アメリと一緒に居たいわ。この部屋は一人じゃ広すぎるもの。」
アメリはそれを聞くと、リリーの頬をひと撫でして「当然だ。」と言った。
その言葉にリリーは思わず吹き出すと、「やっぱり貴女が寂しいだけなんじゃないの?」と大笑いする。
アメリはふんと鼻を鳴らしたが、その言葉を再度否定することは無かった。
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