EP11 イントゥ・ザ・サン ④ =恒星共有=

 太陽へと到着したララ→ララは地球を覆っていた時と同様赤色の霧を展開。

 赤い霧はものの数分で太陽全体を包み込んでしまう。


「これが太陽・・・」


 なんども見てきたはずの太陽が今では目と鼻の距離にある。地球の地表すべてを暖かく照らすその恒星が放つ光は、近付けばすべてを燃やし尽くす灼熱の劫火と化す。


 僕は地球人で一番太陽へ近づいた人間という事になるだろう。その劫火に近づいても焼き尽くされず生きていられるのはララ→ララが持つ異星人の技術力とアストロニアン化しつつあるこの体の恩恵によるものだろう。


 そんな驚きと感慨もほどほどに、となりにいるララ→ララによる太陽の吸収作業は着々と進んでいる。



 直径1,392,700 kmの巨大な太陽をララ→ララは赤い霧を使い解析そして吸収。その膨大な質量の性質を自らのエネルギーと変換していくのはララ→ララが人類から奪った計算能力あっての事だろうか?それとも生来持ち合わせた力なのか?


 太陽をエネルギーとして変換するララ→ララの髪は赤く輝きその演算処理不可の重さを感じさせる。太陽すら覆い包み隠す赤い霧の蠢きはまるですべてを食らい尽くす貪欲な怪物そのもの。


 もしこの光景を何も知らぬ人間が観たとしたら一つの恒星を食らわんとする世界の破壊者のごとく映るだろうし、実際僕とララ→ララがしているのはそういう事だ。



 赤い霧が吸収したエネルギーは逐次ララ→ララの掌の中へと吸い込まれ、太陽はその大きさを次第に小さくしていく。

 それはその分の質量をこの小さな体に取り込んでいるという事だ。


 つまりララ→ララの体重は太陽と同等という事になる。・・・という事はララ→ララの体重は太陽と同じか、もしくはそれ以上。


「なにかとても失礼な事を思われている気がします」

「・・・いやそんな事はないよ」


 僕はあわてて取り繕う。

 通常であればララ→ララに思考を読まれてしまうはずだが、今は太陽の吸収で演算リソースの大部分を占められとてもそれどころではないらしい。



 しかしこの巨大な太陽のエネルギーを人間サイズの女の子に体に破綻なく取り込む。それは分かる、しかしそんな事が可能なのか?


「恒星質量非放熱可逆圧縮です。恒星の質量を圧縮し吸収、その熱量を私の体の中でコントロールしています。」

「へ・・・へぇ・・・」


 説明されても理屈はよく分からない。それに僕は隣で見ている事しか出来ない無力な存在だ。




「────まもなく太陽の取り込みが完了します」


 太陽を吸収するという事はつまり太陽系が暗闇に包まれるという事。この広い宇宙から一つの星系の灯が消えるという事になる。

 そしてその消灯をもって、僕とララ→ララの全宇宙に対する宣戦布告が行われることになる。


 太陽の光が消えてしまう寸前。燃え尽きる火が最後に輝きを増す様に太陽は一層その輝きを強める。太陽表面からはいくつもの太陽面爆発=フレアが発生、それはまるで満開の花のように広がり、太陽誕生から46億年続く輝きに終わりを告げる。


 ひとつの恒星の終わりに立ち上る炎の幻想的な光景を僕とララ→ララは時を忘れ見入っていた。それは宇宙規模でみればほんの一瞬の儚い輝きだ。



 そんな儚い恒星の瞬きを赤い霧は無情に覆い包み隠し吸収していく。


 そして太陽はいよいよその輝きを失い。その膨大なエネルギーを吸収し尽くした赤い霧は再びララ→ララの中へと戻っていく。


 宇宙から一つ灯りが消え、宇宙はほんの少しだけ暗くなった。





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【Tips】

 恒星質量非放熱可逆圧縮


 大質量の恒星を吸収し運用する技術。

 圧縮した質量の熱的コントロールと出力が自在に可能であり、かつ光速航行した際にも周囲を巻き込む引力と重力波の制御も可能。

 一等惑星に規定されるための技術水準のひとつに定められる。


 P.S. 「この技術により当機の体重管理は完璧です!」 ←ララ→ララ談

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