偽りの真実
シバカズ
偽りの章①
偽りとは真実ではないこと。真実とは偽りがないこと。では偽りの真実とは——。
現在、それは一つの伝承として人々に認識されていた。しかし、語り手によって場所や時代設定に微妙な食い違いが生じていた。
物語探求者の
まず、現在も存命である語り手たちは、どこで誰から話を聞いたのか探った。
多くの人は、自宅にあった古い書物を幼少期に母親が読んで、聞かせてもらっていたと回答し、染園も実際の書物を拝見した。
実に古い文書で、文字の翻訳ができる専門家が必要に思われたが、染園は専門知識を習得していたわけではないが、見ただけで何が書かれているのか理解した。
一つ気になるのは、書物にはタイトルや著者といった物語を探求する上で、重要なワードが記されておらず、表紙を開くとナンバーが記載されていることだった。
語り手の家々を巡回するうちに、このナンバーが1から100まであるらしいことに気づいた。
そして、
数年後、100冊の書籍をコンプリートした染園は、達成感と同時に脱力感が芽生えていた。
この伝承の起源も、何を目的として物語を残したのかも分からずじまいだった。
唯一分かったのは古文書を時代鑑定した結果、およそ千年前に書かれたものだということ。
潮時だと、染園が物語の探求から手を引こうと考えていた頃、田舎の大聖堂から作品名も創作者も不明の絵画が数点見つかった。
唯一の手掛かりはキャンバスの裏にあるナンバーの記載だけ……。
古文書と同様の匂いを嗅ぎ取った染園は、すぐに現地に向かった。
交渉の結果、写真を撮る許可をもらい直に拝見すると、見つかった絵画のナンバーは書物のナンバーと筆跡が酷似していた。
染園は再び、収集作業に取り掛かった。
今までも、創作者や作品名が不明の絵画は国内で何十点も見つかっており、その中でも裏に番号が書かれている絵画を重点的に探索した。
数年後、染園はついに100冊の書物と100枚の絵画のコンプリートを果たした。
絵の方は明らかに同一人物の作風が見てとれた。
それにナンバー1から順番に見ていくと、少年の誕生から成長、王との接触や隣国との争いに巻き込まれていく様子が
これは書物の大まかな内容とも一致する。
そして、やはりというべきか、絵画の描かれた年代は千年前であった。
染園は全てを揃えても、肝心の起源や創作者の情報が皆無であることに落胆し、夢にまでうなされた。
文書と絵画、本と絵の描写が頭の中を埋め尽くし、ある結論に辿り着いた。
染園は夜が明けぬうちから作業に取り掛かった。ナンバー1の書物の1ページ目を破り、ナンバー1の絵画に貼り付けていく。ナンバー2の書物は2ページ目を2の絵画に——。
これを繰り返し、1から100までのページと絵が組み合わさった絵本が完成した。
これこそ創作者が真に伝えたかった物語であり、それは真実として伝えられてきた偽りを暴く物語だった。
偽りの章②へ続く……
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