白鴉の巣 ~Episode1 The Beginning~
白猫
01_反芻思考は消えぬ傷跡
魔界、天界、人界。
三つの世界は、境界線によって分断されていた。
それは争いを防ぐために引かれた、神の線だった。
――それは、永遠に守られるはずの理だった。
だが、
権力、利益、名誉。
それらに目を奪われた者たちは、
境界線を越え、爆撃を行った。
その結果、
多くの命が失われ、
いくつもの種族が絶滅の淵に立たされた。
真実と虚構が絡まり合い、
恐怖は憎しみに変わり、
世界は再び争いへと傾いていった。
魔界、天界、人界。
その境界線は、すでに意味を失いつつあった。
黝い薔薇神様
2022年 神帰月。
争いが日常となった国、修羅界。
爆撃事件の舞台となった小さな街。
そこは『エデン』と呼ばれていた。
「何度、後悔したことだろう。
あの乱戦を思い出すたび、
何が正解だったのか、分からなくなる」
仲間の死は、特別なことではなかった。
泥に染まる地面。
空に漂う、消えない匂い。
木に寄りかかるように倒れていたのは、
訓練時代から共に過ごした親友だった。
人を思いやり、
戦地に立つ前から、誰かのために生きていた男。
無駄話のようでいて、
どれも温かい思い出だった。
その澄んだ瞳を、
白鴉は今でも忘れられない。
だから、
彼を置いて行くことはできなかった。
昼は戦い、
夜は静かに捜し続けた。
そして、
朝の光が木々を抜け、
答えを照らした。
言葉は、もう要らなかった。
息が、詰まった。
ただ、
苦しかった。
悲しかった。
「その時だけは、
普通の人間になれた気がした」
その瞬間、
意識は静かに途切れた。
その後の記憶は曖昧だ。
夢だったのかもしれない。
ただ一つ、
あの場所へ戻らなかったことだけは、
はっきりと覚えている。
戦争は、敗北に終わった。
修羅界は魔物の領域となり、
エデンの街は地図から消えた。
軍属、民間を含め、約五万人。
生存者は、二百十六名。
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