第1章 追放編

第1節 追放は計画を持ってしましょう

第1話 勇者なのに追い出された

第60階層の攻略から一夜明けた翌日の昼下がり


宿で休息を取っていた俺――勇者ヒイロは、

仲間たちに個室へ呼び出されていた


てっきり、昨日の攻略の祝勝会か、

あるいは次の階層へ向けた作戦会議だと思っていたのだが……

どうやら、様子がおかしい


幼馴染であり、パーティーのリーダー格でもある戦士ルド

魔法使いのマリー

支援術師のリリィ


三人が醸し出す空気は、

まるで墓場のように重苦しかった


「ヒイロ

……お前を、このパーティーから追放する」


ルドは、震える声を必死に抑えながら告げた


――耳を疑った


「なっ!?

……なぜだ? 作戦には問題なかったはずだが」


被弾ゼロ

消耗品の使用ゼロ

戦闘時間は一秒未満


どう考えても、完璧な戦果だった


だが、マリーが一歩前に出る

必死さを帯びたその瞳が、俺を射抜いた


――邪魔?


俺が言葉を失っていると、

彼女は畳みかけるように続けた


「貴方が前衛にいると、私が得意の魔法を……

いつまで経っても放てないんです!」


俺はそれを聞いて、はっと息を呑んだ


彼女は、『放てない』と言った


つまり――

俺ごと消し飛ばしかねない極大魔法を、

彼女は撃てずにいたということ


それに気づいたヒイロは、

はっきりと分かるほどショックを受けた顔をする


それを見て、次はリリィが声を張り上げる


「そーそー! はっきり言って

……ヒイロってば使えないんだよ!」


「わかる? つ・か・え・な・い!」


『邪魔』そして『使えない』


ここまで言われてヒイロは初めて自分が、

このパーティーで劣っている宣告された事を悟る


そして、最後にルドが告げる


「……全員一致の意見だ

お前がいると、我々の連携が崩れる」


言葉を失った


「荷物はまとめてある……はい、それじゃ」


ずっしりと重い麻袋


中には、金貨も保存食も入っていた


――二度と戻るな、という優しさ


俺は静かに頷いた


「分かった……今まで、ありがとう」


背後で扉が閉まる音が、やけに重く響いた

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