第40話 花の少女
地面から突然生えてきた植物の蕾から現れたのは、身長30センチほどの少女であった。
頭部には大きな花の飾りをつけており、上半身は花びらで作ったようなドレスを着ている。下半身は葉でできたタイトスカートのようになっていて、そのまま茎に繋がっている。
蕾から出てきたので蕾少女……というよりは花少女というべきか。
樹老人「話すと長くなるんじゃが、カクカクシカジカでのう」
もちろん本当にカクカクシカジカと言ってるわけではない。〝斯く斯く然々〟文学的表現という奴だな。
花少女「ほえぇー? はあぁー? ほぉう……?」
樹老人の事情説明を相槌を打ちながら聞く花少女であったが……
……いかん。
茎が細いのに上部の少女部分がそれなりに大きいので、少女のちょっとした動きでも大きく揺れてしまう。その動き、まるで猫じゃらしのごとし……
ウズウズ……
……ぱしっ!
思わずやってしまった。揺れる少女に飛びついて、少女の顔面を肉球キャッチしてしまった。(一応爪は出さないように気を使った。)
花少女「痛っ……くはなかったけどぉ、なぁにすんのよこの猫ぉ!」
「猫の前で猫じゃらしみたいな動きするからにゃ……」
花少女「何なのぉー? このクソ猫ぉ……」
そう言いながらも花少女はツタを周囲に伸ばして体を固定して動かないようにした。
花少女「ちょっとぉー爺様ぁー? 何なのぉ? コイツ〜」
樹老人「さっき話した、儂の魔力を引き受けて人化を手伝ってくれたケットシーじゃよ」
花少女「妖精族のぉ……?」
「カイトにゃ」
花少女「……」
「……?」
花少女「そおぉぉ……」
「……名乗ったんだからお前も名乗るにゃ。名前は?」
花少女「名前ぇ? そんなのなぁいわよぉー」
樹老人「この娘はアルラウネ。植物の魔物じゃが、半精霊でもある。ケットシーであるお主にやや近い存在と言えるかもしれんな」
「アルラウネか、分かったにゃ」
樹老人「カイト、アルラウネは種族名じゃぞ。他にもたくさん居るから、カイトが名前をつけてやれ」
アルラウネ「名前ぇ……つけてくれるのぉ?」
「名前か……フローラでどうにゃ?」
アルラウネ「フローラー……?」
「俺の故郷の言葉で花って意味だったと思う、多分」
「……伸ばさないにゃ」
アルラウネ「えー伸ばさないと言いにくいじゃないー?」
「……まぁ、いいけどにゃ。てか、嬉しそうだにゃ?」
フローラー「……えへへぇ、分かるぅー? だってぇ、名前なんて貰ったのー、初めてだもんー」
「名前は何度も貰うもんじゃないけどにゃ」
樹老人「それでアルラウネの……いやフローラーよ。人里はこっちの方向で合っているよな?」
樹老人が指さした方向を見て、フローラーが言う。
フローラー「人里ぉ? 人間の居る街ー? うーん、だいたいあってるけどぉ、微妙に違うわねー?」
フローラーが樹老人の手を押して、指の方向を数センチ動かした。
樹老人「ほとんど変わらんじゃろうが」
「だから! 長い距離になるとちょっとの違いが大きな違いになるにゃ」
樹老人「そうか……? じゃぁ、フローラーよ、案内してくれるか? 儂の大雑把な案内では猫が不安がるでの」
「やっぱり大雑把だったにゃ……。もういいにゃ、俺がひとっ飛び見てくるにゃ」
俺は一気に空に駆け上がる。そしてフローラーが指差した方向に向けて加速。最高速
俺は飛びながら頭の中で計算する。
一日三十キロで二千日掛かるとして……えっと……合計六万キロくらいか? 時速三百キロで移動したら……二百時間……は……約九日か。
もっと短縮したいと思い、さらに風魔法に魔力を注ぐ……。どんどん加速していく……。と、そのうち爆発音がして音がしなくなった。音速の壁を破ったようだ。以前はここまで加速できなかったはずだが、モル爺の魔力を分け与えられた事で超音速も可能になったようだ。
3日後、俺はモル爺達の居る場所に戻った。
人間の街は発見できてない。
仮に、人間の街まで六万キロとして。マッハ1で移動したら2日で着く計算である。だが、3日飛んでも人間の街を発見できなかったのだ。
方向がおかしいんじゃないかと思い、戻った。
(ちなみに帰りは古老達の魔力を感知して【転移】を使って戻ってきたので一瞬である。【転移】には毎回二万以上MPが必要だが、モル爺との魔力の修行で周囲の魔力を集めて使う事ができるようになったので、あまり気にならなくなった。)
もしかしたら目的地はもっと遠くにある可能性もあるが、それよりも方向のズレが心配だった。方向がコンマ1度ずれていただけで、六万キロも飛べば百キロ以上ずれが生じる計算だからだ。(さすがに暗算では難しかったので、地上に降りて地面に式を書いて計算した。)高く空に登っても、百キロ離れていたら視認はできないだろう。
やはり、場所を知っている者を連れて移動するしかない。
問題はモル爺の歩みが遅い事なので、モル爺は俺が運んでやることにした。
俺は体のサイズを変更し、巨大猫になる。(これは魔法ではなく、どうやら俺に生まれつき備わっているスキルらしい。【猫技】というスキルシリーズにある【
このサイズならモル爺を背負って移動する事が可能だ。
古龍は元の姿に戻って飛んでもらう事にした。
「お前も来るにゃ」
俺はアルラウネのフローラーの胴体を掴み……プチッと引きちぎった。
フローラー「ちょぉ!! 何すんのよぉ!! 地面から生えてる植物種を〝摘む〟なんてぇ!! 死んじゃうじゃないのよぉー!!」
「え、死ぬにゃ?」
フローラー「まぁー、そんなすぐにはぁ? 死なないけどぉ。……時々地面に下ろしてよねぇー」
「分かったにゃ。じゃぁ行くにゃ!」
そこからは早かった。時折フローラーを地面に下ろして方向を確認しながら移動し、半日ほどで人間の街の近くまで到達できたのだ。(古龍も音速で飛行が可能だったのと、街は思ったよりかなり近かったようだ。)
フローラーは地面に降りると毎回文句を言ったが。
フローラー「ちょぉっと! とんでもないスピードで飛ぶんじゃないわよ! 死ぬかとおもったじゃないのよ!」
さすぅがぁのぉ? フローラーもぉ? 語尾が伸びてないので本当に怖かったようだ。
ちなみにフローラーの足は葉っぱのタイトスカートの中にちゃんとあった。足は根みたいなもので、裸足の足を地面につければ、足から大地の魔力を吸えるんだそうだ。
☆
さすがに古龍がドラゴンの姿のまま街に近づくと人間の街にパニックが起きるだろうと思うので、街から離れた場所で降り、歩いて向かう事にした。
人間の街が近くなると、俺にもなんだかザワザワと小さな喧騒の集まったような魔力を感じるようになった。なるほど、これが人間の街の魔力か……憶えたにゃ。次からは【転移】できそうだにゃ。一応念の為、地面に魔力の杭を打ち込んでマーッピングもしておくが。
周囲の魔力を探ると近くに魔猪の群れが居るようだったのでウォリアに狩ってこさせた。(この辺は非常に弱い魔物しか居ないらしく、ウォリアの満足するような相手はいないようたが。)
そして戻ってきたウォリアが、狩りの途中で人間の住処をみつけたと言った……。
樹老人「街ではないのか?」
ウォリア「山ノ中腹、洞窟、何人カ居タ」
龍老人「洞窟なら、街ではないだろうな」
ウォリア「デモ、人、タクサン、居タ」
「じゃぁ街かもしれんにゃぁ? 人がいっぱい住んでるところが街って言うんにゃぁ」
ウォリア「デモ、建物、ナカッタ」
「じゃぁ街と違うか。建物があるのが街にゃからね」
ウォリア「洞窟、アッタ」
「じゃぁ街かもしれんにゃ。地下都市系かもにゃあ」
龍老人「……街に住めない事情のある人間達が隠れ住んでいるのかもしれんぞ?」
「……オチを盗るにゃ」
龍老人「?」
「なんでもないにゃ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます