第25話 コイツ……やっぱり怪物だった
5キロの金属塊が音速を超える衝撃音とともに発射され、オーガの構えた金棒に当たる。
これならさすがに金棒も圧し折れるんじゃ?
と思ったのだが、なんと金棒は無事。
あの、それ、何でできてるんですか?
ただ、金棒は折れなかったが、オーガのほうは弾丸を受け止めた衝撃を腕力だけで支えきれず、押し込まれた金棒が体に食い込み数歩後退った。
って、後退るだけってどんだけ……
じゃぁ次。
カタパルトに込める魔力を増やす。
同じ五キロ弾だが、これまでの弾丸の速度はマッハ1。今度は一気に五倍、マッハ5でどうだ?
ちなみにマックスで音速の九倍くらいまでは行ける。
【カタパルト】の能力的にはもっと行けるのだが、マッハ10を超えると弾丸のほうが持たない事が判明したのだ。高熱になり、飛翔中に融けてなくなってしまう。(融け切る前に当たるような至近距離なら効果があるかも知れないが。)
マッハ5の弾丸も、金棒で受けられてしまうが、さすがに今度は踏ん張りきれず、オーガは後方に吹き飛ばされて転がった。
すぐに立ち上がり金棒を構えるオーガ。まだまだやる気だね。
しかし……金棒を見ると少し傷がついた程度。どんだけ頑丈なんだ、その金棒?
立ち上がったオーガは、なぜか嬉しそうな笑みを浮かべていた。
クイクイと手招きをする鬼。
もっと撃ってこいって?
望むなら、撃ってやろう。
俺が【カタパルト】で狙いを定めると、オーガはまた金棒で狙われた場所をカバーするように構えたが、先ほどとは少し構え方が違う。今度は野球のバントのような持ち方をし、かつ金棒を斜めにして構えた。
なるほど、賢いじゃないか。弾丸を正面から受け止めるのではなく、斜めに弾くつもりか。
しかも、オーガが気合を入れると、オーガの魔力が膨れ上がていくのを感じる。おいおい、魔力可変タイプだったのか?!
……魔力は先程の倍くらいまで増えて止まった。ほっ。まだ俺の半分だにゃ、大丈夫、大丈夫……第三形態とかないよね……?
もう一度、マッハ5弾丸発射。もうこちらも最初から金棒に狙いを定めている。
弾丸は斜めに構えた金棒に当たり、弾かれて斜め後方に飛んでいったようだ。オーガの斜め後ろの森の木々が大爆発を起こして消し飛ぶ。
オーガはというと、地面には跡を残しつつも、今回は吹き飛ばされる事もなくその場に踏みとどまっていた。
オーガがニヤリと笑う。
そして腰を落とす。
おっといかん! 【縮地】が来る!
——なるほど、攻撃を受けたあと〝立っている〟状態で持ち堪えるのが鬼の勝利条件か。【縮地】が使えるからな。
縮地を使わせないように慌てて何発も音速弾丸を撃つが、全て金棒で弾かれてしまう。
しかも慣れてきやがって。構えて受け止めるだけでなく、積極的に金棒で弾丸を横に弾きながら前に出てくるようになってきた。(弾かれた音速弾のせいで森の中はクレーターだらけの大惨事になっている。)
やっぱり怪物だ、コイツ。
どうしよ?
逃げたほうがいいか?
魔力量的にはまだ負けないとは思いつつ、しかしその迫力にちょっと迷いが出る。
その迷いが一瞬の隙を生んだんだろう。気がつけば、オーガが俺の眼の前に居た。ついに【縮地】で間合いを詰められてしまったのだ。このオーガ、心の隙を突いてくるよな、ホント……。
襲いかかってくる金棒。
その金棒をスモールシールドで受け止める。咄嗟に残していた魔力も全てシールドに回す。オーガがパワーアップしていたので、念の為だ。
まだ俺のほうがMPが多いからな。スモールシールドは巨大な金棒もしっかりと受け止め揺るがなかった。
集中力があがっているせいなのか、すべてがゆっくりに見え始めた。(【身体強化】で脳の神経伝達速度も上がっているのかも?)
近くで見た金棒は、傷だらけになっていた。
ほんとに何でできてるんだその金棒? 俺にくれないかな? 死んだら戦利品として持ち帰るか……
眼の前に晒されたオーガのボディに向けて弾丸を発射する。ほぼ全ての魔力を【身体強化】と【シールド】に回しているため、攻撃に回す魔力がほとんどないのだが、防御に全力を尽くさなければならない状況も想定済みだ、対策は考えてある。事前に収納してあった音速弾を使う。(収納物の開放にはほとんど魔力を消費しないからな。)
マッハ9弾丸開放。しかも、
これまでこれを使わなかったのは、命中率が悪いからだ。収納から出された弾は、出口の向きがちょっと変わるだけで行き先が大きく変わってしまうからな。
だがほぼゼロ距離なら外れる事もない。
至近距離でレーダーロックオンもない音速弾はさすがのオーガも対応できなかったようで、弾丸はついにオーガの胴体に命中した……。
貫通した弾丸がオーガの背後で〝音速の壁〟を超えた衝撃音を発する。オーガの背後の森が音速弾の着弾で爆発する。
前世の感覚だと自然破壊が気になるところだけど、この世界の森はとんでもなく広大なので問題ないだろう。
だが、凄いなオマエ……。僅かに間に合わなかったが、それでも反応して、金棒で防ごうと動きだしていたのだ……。
しかし、心臓を吹き飛ばされたら、さすがのグレートオーガも終わりだ。
戦闘狂のグレートオーガよ……戦って死ねて本望か?
・
・
・
+ + +
グレートオーガ「ナゼ…? 殺サナカッタ?」
俺は、体に大穴を開けて倒れたオーガに、すぐに
「別に……なんとなくだにゃ」
理由はない。が、なんとなく、殺すのは惜しいと思ったのだ。
このグレートオーガの戦闘センスは大したものだと思った。もはや尊敬にも近い念が湧いてきたのだ。
おそらく、ここまで強くなった個体は、オーガ種の中でもレアケースなんじゃなかろうか。
レアモノを殺してしまうのは惜しい。
グレートオーガ「……俺、強イオマエト戦ッテ、死ンダ。マタ、生キ返ッタ。キット、俺、マタ強クナル」
「……そうにゃ?」
グレートオーガ「モット強クナッタ俺ト、戦イタイ、ソウ思ッタカラ、俺ヲ助ケタ、ノダロ?」
ちがう、そうじゃないぞオマエェ?
グレートオーガ「期待、応エル…キット。俺、モット強クナル! ソシテマタ、オマエニ挑戦スル! 楽シミ!」
そんな期待はしとらんっての……。やっぱ殺しといたほうが良かったか? 今ならまだ殺れそうだが……
……まぁいいか。
まぁ次の機会があるかどうか分からんが、あったらまた返り討ちにしてやんよ……。(実はもう次の対抗策を思いつきつつあるのだ。思いついてしまうと試したくなる。それには、こいつみたいな奴が居たほうがいいと、ふと思ってしまった。)
戦利品に金棒を貰った。鬼に金棒が欲しいと言ったらくれた。金棒は鑑定してみた結果、【オリハルコン】であると判明した。
あの、これ、どうやって手に入れたんスカ??? オーガはオリハルコンの鍛造技術でも持ってるのか?
帰る途中、さっき膝を撃ち抜いたハイオーガのところにも寄った。中途半端に歩けない状態で放置も可哀想だからな。どうせならひと思いに殺してやるのが武士の情だろ?
なんてな。エリクサーを与えて治療してやったんだけどな。
ハイオーガは涙を流して感謝してた。
うん、なんか君、
コイツもいつか、グレートオーガに進化するのだろうか……?
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