第21話 宿敵、再遭遇
聖域に戻った俺は、疲れてしばらく寝込んでしまった。
体力や魔力は泉の水で回復しているはずなのだが、精神的な疲れ……いや、恐怖だ。
殺されかけてショックだったのだ。
危なかった。
炎鷲や一ツ目巨人が簡単に倒せたので、調子にのってしまった。
だが、上には上が居るもので。外の世界にはもっと強い奴も居るという事を思い知った。
やはり、今の実力では、外の世界で〝余裕で生き残る〟のにはまだ足りないようだ。
魔力を全力で使い切りながら、泉の水で即回復させるという戦法も、何度も繰り返すと
+ + +
もっともっと実力をつける必要がある。
実際、まだまだ魔法も使いこなせていないし。身体も子供だし。成長する余地はまだまだいくらでもある。
それからはまた聖域に篭もり、俺は再び魔法の研究・修行の日々に戻ったのであった。
そして……
・
・
・
……また、十年が過ぎた。
「気がつけば」という感じ、正直あっという間だったが。
十年も一人ぼっちで泉の辺で引き篭もり生活をしてたわけだが、特に寂しいとも感じなかった。
もともとの性格もあったと思うが、これは種族的な特性なんじゃないかと思う。
群れをつくる習性のある動物なら、一人になると寂しいとか不安だとか感じるが、もともと群れを作らず一人で生きていくのが当たり前の動物だったら、〝孤独〟や〝寂しい〟などとは感じないんじゃないかと思う。それと同じだ。
おそらくケットシーは群れで生きる種ではないのだろう。
退屈もしなかった。
修行…というよりは魔法の研究という感じだったし、十年の間に趣味のようなものもいくつかできて、結構忙しくしてたのだ。
さらに、すごく気が長くなった気もした、人間だった頃と比べて。多分これも、種族的特性なのではないかと思う。
おそらく、短命な生物は生き急がねばならないので気が短くなるが、長命な生物は慌てる必要がないので気が長くなる傾向があるのではなかろうか? そして、なんとなくだが、ケットシーは長命な種族な気がする。
完全に聖域に籠もりっぱなしだったわけではない。たまには
戦う時にはちゃんと事前に相手を【鑑定】して、勝てない相手には挑まないようにした。まぁ鑑定などせずとも、相手の魔力量を感じ取れば、相手の強さはだいだい分かるようになったが。
——この世界を観察していて分かってきた事がある。この世界での強さとは、偏に魔力の過多な気がする。
この世界の生物は身体を強化するのに魔力を使っている。魔法を使わないモノであっても〝強いモノ〟というのは大量の魔力を体内に保持し、身体をそれで強化しているのだ。
いつぞやの〝鬼〟はおそらく俺の何倍もの魔力を保有していたはずだ。魔力を感じとっていれば、敵う相手ではないと気づいたはずなのに、実に粗忽だったと思う。
今は、外に出て遭遇した魔物が自分より強かった場合は、気配を消してそっと聖域に撤退する。そう、〝あの時〟の俺は、せっかく【猫技】という便利なスキルを持っていたのに使いこなせていなかった。【バランス】【姿勢制御】【着地】などは使えていたが、【忍び足】とか【気配を消す】などは使っていなかったのだ。
今はそれらのスキルもしっかり使いこなせるようになったので、うっかり強い魔物に近づいても気づかれずに退却する事ができるのだ。
まぁ、あの後、あの鬼のように危険を感じさせる魔物には出会わなかったのだが。
だが……
十年目にして。
ついに再遭遇。
鬼だ!
…なんか、あの時の鬼より幾分小さい気もするが?
顔もあんまり怖くない。
まぁ十年も経ち、俺も身長が伸びたし魔力も増えたので、当時ほど脅威に感じなくなったのかな。
一応、気配を完全に消した上で、そっと鬼に近づいてみる。
見えるところまで近づいても、どうやら鬼は俺に気付かないようだ。
そのまま鬼を【鑑定】してみた。
種族:ハイオーガ
MP:1150/1200
マックス値1200か!
敵わないわけだ。十年前の俺の魔力量からすると倍以上だからな。
ちなみに、鑑定のレベルが上がったら、色々なステータス値が見られるようになった。と言っても自然に項目が増えるわけではなく、自分が数値化したいと思う事があると、それがステータスに現れる。
ステータスと言えばあるあるの、【レベル】や【HP】も表示させてみたのだが、あまり意味がなかった。まずレベルは、種族内での表示になるようで、比較にならないのだ。同じ種族同士であれば比較可能だろうが、例えばゴブリンのレベル10と嵐猫レベル1では、数値上はゴブリンのほうが上だが、戦ったら嵐猫レベル1のほうが圧倒的に強い。
HPに関しては、純粋に保有魔力に比例していたので、MPだけ確認すれば事足りるのが分かった。
この世界の生き物(魔物も含む)は魔力によってナチュラルに身体強化が行われている。中にはまったく魔力を持たず、身体強化をしていない生物もいるが、そのような生物はあまりに弱い。吹けば飛んで死んでしまうような存在だ。
また、単純に魔力量だけでは測れないのも分かってきた。同じ魔力で身体強化していても、どのように強化しているかは種によって違う。例えば防御力に魔力の大部分を割いていて、攻撃力はそれほどでもないとか、あるいはその逆で、攻撃力は非常に強いが防御が手薄で打たれ弱い、なんてケースもありうるわけだ。
まぁ、これに関しては結構複雑で分かりにくいのだが。
例えば筋力が強くても動きが遅いとか、筋力はそれほどでもないが俊敏などというケースもあるので、あまり細かく分析するのはやめて、大まかに、【攻撃力】【防御力】【素早さ】くらいでチェックするようにした。
これまで発見した魔物でこの鬼【ハイオーガ】よりMPが多かったのは……例えば
地竜は竜と言ってもその姿は地球の鰐亀のようで、甲羅がありとてつもなく頑丈なのだが、おそらく保有する魔力の大部分をその甲羅の強化に使っているようだった。甲羅の防御力が異常に高いのだ。それでも、防御だけでなく力も強く攻撃力もある(ブレスを吐いてくる)。ただ、地竜には大きな欠点があった。動きが非常に遅いのだ。地竜の 【素早さ】 は150しかない。(俺の素早さは五千以上だ。)
さて、鬼…改めハイオーガに、リベンジマッチと行きますか。
相手はマックスMP1200というなかなかの強者ですが…
大丈夫、全く問題なしデスヨ。
なにしろ10年掛けて成長した俺のMPは既に二万を超えてますんで!
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