第16話 包囲と仲間たちの力


ガス巨星の衛星群宙域。


「シルバーフィッシュ」と「はちわれ丸」は、背中合わせの陣形を取っていた。

周囲を、五隻の黒い楽園執行艦が完全に包囲。

旗艦を中心に、四隻の支援艦が扇状に展開し、逃げ道を塞いでいる。

ブリッジは緊迫した空気に包まれていた。

ピコがモニターを睨みながら叫んだ。


「重力ロックかけられてる!ジャンプもワームホールも封じられた!」


リナが操縦桿を握りしめた。


「なら、正面突破だ。全員、戦闘配置!」


太郎は武器管制、ミケロンは量子干渉の準備。

トリオンは初めての実戦で少し震えながらも、ミケロンの隣に立つ。


『私……怖いけど、頑張るよ』


ミケロンが優しくテレパシーで伝えた。


『大丈夫。一緒にやろう』


旗艦から、重なった複数の声が響く。


『ミケロン、トリオン。これ以上抵抗すれば、船ごと破壊する。人間たちも巻き添えだ。降伏せよ』


太郎が外部スピーカーで応じた。


「降伏なんてするかよ。お前らの完璧な楽園が、そんなに脆いのか?」


交渉を合図に戦闘開始。

まず支援艦四隻が同時射撃。

重力ビームが交差する。

リナの巧みな操縦で、二隻の船はギリギリで回避。だが、一発がかすめ、「はちわれ丸」のシールドが20%ダウン。ピコがハッキングを仕掛ける。


「支援艦の連携システムに侵入!偽の標的データを流すよ!」


支援艦の一隻が突然味方に向かって射撃を開始。混乱が広がる。

その隙に、ミケロンとトリオンが同時に量子干渉を発動。

ミケロンは旗艦を、トリオンは隣の支援艦を狙う。


『いくよ、トリオン!』


二匹の前足が光る。

旗艦の重力フィールドが乱れ、

支援艦のエンジンが一時停止。

太郎が主砲を連射。


「今だ!」


プラズマビームが旗艦の側面を直撃。

装甲が剥がれ、内部構造が露わになる。

リナが補助砲で援護。

支援艦二隻が大破し、撤退態勢に。

旗艦から怒りのテレパシーが飛ぶ。


『……人間どもが、ここまで干渉するとは!

古き猫たちの名にかけて、許さん!』


旗艦が全力の重力ビームを放つ。

空間がねじれ、二隻の船が引き込まれそうになる。

ミケロンが叫んだ。


『トリオン、一緒に防ごう!量子シールド、最大!』


二匹の猫が並んで立ち、

前足を合わせるようにしてエネルギーを集中。

淡い光のバリアが、二隻の船を包む。

重力ビームがバリアにぶつかり、

激しい火花を散らす。

ピコが叫んだ。


「バリア持続時間、10秒!それ以上は無理!」


太郎が最後の砲撃を準備。


「リナ、旗艦のブリッジを狙え!」


リナが急旋回。


「了解!」


二隻の船が連携し、旗艦の弱点に集中砲火。

バリアが限界に達する瞬間――旗艦のブリッジ部が爆発。

重力ビームが止まり、旗艦が大きく傾く。

残った支援艦二隻が、旗艦を護衛しながら撤退を開始。


『……撤退する。だが、次は……楽園全体が動く』


そう言い残し、五隻の黒い船は、空間を歪めて消えていった。


ブリッジに、勝利の歓声が上がった。

ピコが飛び跳ねた。


「勝った! また勝ったよ!」


リナが大きく息を吐いた。


「……今回は、ギリギリだったね」


太郎がミケロンとトリオンを抱き寄せた。


「よくやった。お前らのおかげだ」


トリオンが涙目で笑った。


『私、役に立てた……?』


ミケロンがトリオンの頭を舐めるように触れた。


『すごく立ったよ。これが、私たちの力』


だが、勝利の後で、ピコが深刻な顔でモニターを示した。


「楽園側の最新情報……保守派が『最終手段』を準備してるらしい。ブラックホールの窓を一時的にすべて封鎖して、家出を完全に阻止する計画してるみたい。」


ミケロンが息を飲んだ。


『それじゃ、新しい家出猫が来られなくなる……みんな、楽園に閉じ込められちゃう』


太郎が拳を握った。


「なら、止めるしかないな」


リナが頷いた。


「楽園に、直接行く?」


ピコが耳をぴくぴくさせた。


「方法はあるよ。ミケロンとトリオンが知ってる、秘密のブラックホールの窓」


ミケロンが静かに言った。


『……うん。ネコ・エリシオンに、帰る時が来たのかも』


トリオンが少し怖がりながらも、決意した。


『私も、行くよ。みんなと一緒なら』


船は方向を転換し、楽園への道を探し始めた。


これまでの逃亡と戦いは、ここから最終章へ。

彼らは、楽園を変えるために、故郷へと向かう。





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