第11話
青嵐を囲むように舞っていた土埃が意思を持っているかのように動く。四方に散っていたが、それは複数に分かれる。
やがて密集していき、無数の槍を形作る。先端が尖り、殺傷力を上げていく。
青嵐はその光景を前にし、顔を顰めた。
(さっきの棘の比じゃないな。こいつは防ぐのも受け流すの不可。風の結界は無意味……解くか)
風の結界が消えると同時に空気が爆ぜ、周囲の物質が押し退けられる。ダイナマイトの爆発にも匹敵する威力だった。一時的に土埃が消滅する。
しかし、あくまで一時的。効力は数秒。一息吐く暇もない。地の精霊使いがアスファルトを細かく砕いたものを制御し、再び同じ状態を作り出す。
むしろ青嵐の様子を見てか、先程よりも攻撃の規模が拡大したまであった。都市一角を覆っており、地上から見れば辺りが少し薄暗く見えていることだろう。
「ハァ、めんどくせー」
「ど、どうするの?」
今まで黙っていた來花が思わず声を上げる。今の状況が完全に敵側に分があり、自分達が劣勢に追い込まれていると自覚していた。
「心配しなくてもお前に傷一つつけさせん。依頼はしっかりと果たす」
「そういうことじゃなくて……!」
「俺を信じて大人しくしてろ」
青嵐に見つめられ、來花の胸が高鳴る。普段の締まりのない表情からは想像も出来ない真剣な顔。元の精悍な容貌も相まって、彼の魅力が最大限に引き出されていた。
いくら大人びているとはいえ、來花はまだ高校生。異性を対して知らず、大人の男に近距離で見つめられれば狼狽えもする。
「わ、分かったわ……でも、大丈夫なのね?」
「任せろ。これでも腕は立つと自負してる」
青嵐はそう答えると、自身を取り囲む、最大限まで殺傷能力を高めた槍へと視線を戻す。その位置、タイミング、速度を限界まで高めた動体視力で看破する。無駄のない動きで回避していく。
「本当にめんどくせーな」
しかし、躱しても尚、追ってくる。先程までの棘とは異なり、攻撃が外れた後も軌道を捻じ曲げ、青嵐に狙いを定めているのだ。
「追尾機能付きってことか……地の精霊使いも進化してんな」
軽口を叩きつつ、青嵐はしっかりと來花を抱き締める。彼女が身動ぎするも無視。お年頃の少女の恥じらいよりも依頼を失敗する方が青嵐にとっては都合も寝覚めも悪いからだ。
「しっかり捕まっとけ」
返事も待たず、青嵐は空中を旋回する。戦闘機が機体を傾け、飛んでくるミサイルを華麗に回避するように、彼も襲いくる無数の槍から只管に逃げ続ける。
常人であれば三半規管に異常をきたすほどのアクロバティックな飛行をしていたが、風の精霊による加護が二人に施されていたので多少の揺れ程度にまでは軽減している。
「しつこい女は嫌いだぜ」
青嵐は向かってくる攻撃に対し、回避一択だ。
反撃は一考もしない。今はただ相手の攻撃を受けないことだけを念頭に置き、回避に徹するのみ。
その間、別に何もしていないわけではない。青嵐は時が来るのを待ち構えているのだ。
(これだけ避け続けていれば、俺に攻撃が当たらないことに痺れを切らし、必ず大技で攻めてくるはず……その瞬間に隙が生まれる)
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