第21話 気づいてしまったが眠らせておく
唐突な事実陳列に渾身のどや顔から一気に涙目に突き落とされました。
感情のジェットコースターや。
「女心が分かってなさ過ぎる。そんなことがもし知られたら、多くの女がナオ君の前に押しかけてきてありとあらゆる手段を使って誘惑してくるぞ。それをキミは大したことではないんですけど、みたいな軽い調子で……」
ありとあらゆる誘惑…… だと…… 何それ素敵。
恐らく僕の防御力は紙切れ一枚より薄いというのに。
「君が言っているのは要するに与えられしものの奇跡を使い女を際限なく美しくできる、ということだぞ。それに興味を持たない女などまずいまい」
おお、そういう風に言われるとなんか凄い気がするな。
この世界では『与えられしもの』は実在する奇跡という認識のようだし。
でも、奇跡なんて言っても髪や肌が綺麗になるだけだしそこまで騒ぎになるものかな。
「全く、どこをどうすれば治癒の力が女性の美しさにつながるんだ。君の世界では美の女神と癒しの神が同一の存在ででもあったのか?」
あ、そうかこの世界では整形外科なんてないから医者と美容は全く結びつかないんだな。
僕は美容整形とか知ってるし、荒れた皮膚の治療とかは皮膚科の範疇だし、そこに何でも癒やせる奇跡という要素が加わった結果なんだろうな、と受け入れちゃったけど。
あ…… 美容整形といえば…… 『あんなこと』も出来るの……? ……ヤベぇな、忘れよう。
「癒しの力だけでも貴族、王族が大騒ぎするだろうに、そのうえでそんな力はほぼ全ての女性、場合によっては男も巻き込んだ大混乱を巻き起こすぞ。複数の奇跡をあたえられたものなんて聞いたこともない。創造神の寵愛を受けるとはこういうことなのか……」
「あ、僕の世界ではお肌を綺麗にするのは割とお医者さんの範疇でしたから治癒とは別の力ってわけでもないんですよ」
「治癒と美容が……? すまほといい、君の世界の常識も測り知れないな」
溜息まじりに呟くミリアさん。
愁いを帯びた美人は絵になるけど溜息は幸せが逃げるといいますよ。
元々この世界にはない概念を更に奇跡ブーストしてるから理解の範囲を超えてきちゃってるのかな。
短時間で精神的な疲労が見受けられる。癒してあげたい。
そんなやりとりを横で見ていたポカポカ少女が随分とお待ちかねのご様子。
お疲れのミリアさんには少し休んでもらって、お先にやってしまおう。
「ミーナさん、お待たせしました」
「わーい」
「いやいや、待ちなさい。話聴いてた? 気軽に奇跡をふりまかないでくれ」
ふむ、強く当たってあとは流れで行けるかと思ったけど、早くも復帰したミリアさんに止められてしまった。すんなりとはいかないようだ。
「でもどのくらい効果があるかは一度確かめておいたほうが良くないですか? 元々がそんなに傷んでなければそれほど大きな変化はおきないかもしれませんよ」
「そうだそうだ」
よくわかっていなそうなミーナさんがわからないままにこっちの陣営についたぞ。天使かな?
「ミーナまで、全く…… だが一理あるな。ミーナは軽い畑仕事などしていたが、森で普通に暮らしていただけだ。それ程髪が傷むとも思えない。ならそう変化はない可能性も高いか」
天使参戦により戦況は有利に傾いた。勝ったな……
「それじゃやってみましょう。ミーナさん、こちらへ」
「はーい、お願いします!」
そう言いながら僕の隣に来て、ダークブロンドの頭をズイッと差し出してくるミーナさん。
可っ愛か わ…… 何コレ、大天使?
僕は毛先の方、つまり頭皮には直接触れないように髪の毛だけをそっと手にすくい取るように触れてみる。
「どうですか? ポカポカしますか?」
「うん、気持ちいいよ~」
髪の毛に触るだけでもポカポカは感じるのか。まぁこれは想定内だな。
よし、やるか。
「あ、ポカポカが凄くなった。フワァ~ってなるよ」
ふふふ、どうだこの僕のナデナデスキル(ただのチート)は!
人生初の撫で撫でだがこちとらには神様公認チートがあるんだぜ!
「あの…… ナオ君、凄く満足げな顔をしているところ悪いんだが」
「はい、どうかしましたか?」
答えながらも撫で撫では止めない。サラサラだし、仄かに甘い香りもしてきたし、もう僕の第二の人生は一生このままでミーナさんを撫で続けている感じでいいんじゃないかな。
「キミの手が神聖な光に包まれているのは、先ほど覚醒したからだとしても、だ。その、触られているミーナの髪まで光を纏いだしたのはどういうことなんだ……」
「あ、大丈夫です。触るのを止めれば、すぐに消える筈です」
「なるほど。では一度手を止めてもらえるかな。今までの様子から言えばもう充分だろう」
手を止める……? なんで? 意味が分からない。キョトン。
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