第11話 試練というか、悪ふざけ?
転生したら歩くセクハラマシンになっていた件について。
痴漢冤罪で死んだから、今度はちゃんと痴漢してから死刑になるようにしてくれたのかな。
流石、上位存在さんは気が利いている。
……いや、笑ってる場合じゃない。マジでどうしよう。
「与えられしものは、その力が人の身には大きすぎて、予期せぬ反作用を起こすことがあると言われている。それを神が与えた試練だという考え方さ」
「それが、与えられしものの試練……?」
「さっきも言ったおとぎ話で言えば、男に変わった女王様は幼い頃からの思い人と結婚し子供も出来てめでたしめでたし、というお話なんだが、この話には続きがあってね。男に変わった女王様は、その後“男のサガ”に振り回されて、公式記録に残っているだけでも二百人以上の子を成した。公務は滞り、後宮に金は消え、後継者争いは熾烈を極め、結局その国は滅んでしまった」
……うわぁ。
男のサガ、か。
女性だった人が、突然“持ってしまったもの”に振り回された。
それまで知らなかった欲求に、人生ごと引きずられた。
「奇跡は救いであると同時に破滅も孕む。それを乗り越えることこそが本来神が与えたもうた真の贈り物なのだ…… なんて信心深い連中は言う」
ミリアさんの言葉を聞きながら、胸の奥が重くなる。
神の試練。
そういう、もっともらしい言葉で片付けていい話なんだろうか。
「ナオ君。キミは創造神と話をしたんだろう。試練について、どう思う?」
「僕が会ったあの上位存在さんがこの世界の創造神様と同一の存在かどうかはわかりませんが…… 正直に言っていいなら」
少しだけ、言葉を選んだ。
「試練というより、悪ふざけか手抜きだと思います。あの方は人間がどうなるかより、自分が面白いかどうかを重要視しておられましたから」
「キミが出会った神は、そんな存在だったと?」
「はい。『力を渡したら暴走しそうだけど、まあいいか』とか、『面白いこと起きないかな』とか、そんなノリです。…… 僕の能力も、多分その延長です」
一度、息を吸った。
「前世で女性に縁がなかった僕に、『次は思う存分触れられるようにしてあげる』って言ってましたから」
言い終わったあと、部屋が静かになった。
ああ、ついに隠していた秘密を言ってしまった。
でも、変な隠し事をしては駄目だ。
ミリアさんは大切な娘さんの命について僕の能力に希望を感じているんだ。
そんなときには全ての情報を差し出すべきだ。
それで判断してもらうほうが絶対に正しい。
ミリアさんは何も言わない。
視線も逸らさない。
ただ、黙っている。
その沈黙が、数秒続いた。
その間に、僕の頭の中がスッと冷えていく。
もし、この力で誰かを傷つけたら。
もし、善意のつもりで触れて、それが許されなかったら。
それでも僕は、人を救うと言えるんだろうか。
「……」
「プッ」
ミリアさんが、吹き出した。
「アハハハ……女性に触れるようにする、か。確かにそれは試練なんて生易しいものじゃないね」
「いや、はい。なんとも申し訳ないです」
大笑いしながらも、その目はどこか優しい。
「馬鹿にしているわけじゃないんだ。ただ余りに予想外なことをいわれたもんだから、ついね。申し訳ないのはこちらの方だよ。すまなかった」
「いえ、変な事を言っている自覚はありますから。こちらこそすいません」
僕らはしばらくお互いに謝り頭を下げあう。それがなんとも可笑しくて自然と笑いがこみ上げてきた。
「フフッ」
ミリアさんも眉尻を下げて困ったような顔で笑う。一々可愛いなこの人。好き。
「ナオ君。傷の痛みや病の苦しみを忘れさせるために必要なことなら、それは卑しい行為じゃない。命を救うための手段だ」
胸の奥に、固まっていたものが少し溶けた。
「それで、どうだろう。ミーナを看てはもらえるだろうか」
「はい。全力を尽くします」
そうだ。
僕は、人を治せる存在になりたかった。
この力が歪んでいても。
例え悪ふざけの産物であったとしても。
それでも、誰かを救えるなら。
僕は、逃げない。
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