海賊ルート

第1話 旅立ちの日に

クルニア歴1036年2月17日


『貴方は不幸にも亡くなりました。

それを私が拾い上げ、再構成しました。スキルをつけて。

貴方に与えられたスキルは"適応"。

どのような環境でも、どのような物でも耐えられるでしょう。

この世界には、貴方と同じ境遇の方が6人います。

それでは、良き人生を。』


◇◆◇◆◇◆


「あ~……頭いてぇ」


なんだよ、さっきの声。

死んだっつっても俺生きてるしなぁ。


あ!

これって転生ってやつか!

そっかそっかー!


俺、転生したのかー!

はっはっはっはー!

……はぁ。


転生したのはいいけどさぁ。

タイミング選んでくれよー。

なーんで、魔物に襲われたタイミングなんかね。


家、というか町までボロボロだし。

なんもできねぇじゃん。


あーぁ、綺麗な港町だったんだけどなぁ。

どいつもこいつも、あのタコみたいな魔物のせいだ!

急にやってきて暴れやがって!


そりゃ俺たち漁師だけど、ナワバリは荒らしてないんだぜ!?


海は怖いけど雄大で、俺にとっちゃ遊び場みたいなもんだったけど……。

これからどうしたもんかな……。


◇◆◇◆◇◆


家の残骸、なんとか無事だったドアを椅子がわりにして座る。


さてと、前世のことも思い出したし、一回ちゃんと考えるか。


俺はゲイラ。


前世は海鮮メインの料理人だった。

だいぶ修行したんだぜ!?

新鮮な魚たちを捌いては食ってもらって。

充実してたんだけどなぁ。

働きすぎが祟ったのか心不全でポックリよ。


んで転生したら漁師と。

魚に縁があるなぁ。


で、今なんだけど。

ここはアルマンドラ大陸西の端にある「バック連合国」。

……というか跡地。


メチャクチャにされちまったよ。

連合とはいいつつも、基本的にお互い干渉しないらしいからな。

俺らがこうなっても手助けは期待できないって、長のルルド爺がぼやいてたの覚えてる。


んー……。

……やっぱ海しかねぇな。


前世も今も、海に興味はあったんだ。

美味い魚たちを産んでくれる母なる海。

感謝はしてっけど、それ以上に海の事を知らねえ。


だから、魔物に襲われちまった。


ああ、そうだ。

海を知りたい。果てを見たい。


そこになにがあるのか。


よっしゃ!

そうと決まれば船出じゃ!



……船も壊されてんな。


◇◆◇◆◇◆


マストも底もヒドイもんだ。

これじゃ海水浴しかできねぇ。

1から作るのも時間かかる、小舟でもありゃいいんだが。


「お前、ゲイラか……!?」


おん?

後ろから声掛けられた。

振り返ったらルルド爺がいた。


「ルルド爺!生きてたのか!」


「そりゃこっちのセリフじゃ!お前さん、よう生きとった……!」


「運がよかっただけだよ。ルルド爺は?」


「それこそ運がよかっただけじゃ。腰痛用の薬草を取りに山に行っとったから、なんとかじゃ」


なんというか、ルルド爺らしいな。

思わず笑顔になるがルルド爺は曇ったまんまだ。


「じゃが、他の者はダメだった。回ってみたが生きとるのはお前さんだけじゃった……」


「そっか……」


そこで会話が止まっちまう。

波の音だけが響いてる。


「なぁ、ルルド爺」


悲痛な顔をしてる所にこんな話はなんだが、むしろ今しか言えない。


「俺、海にでるよ」


「……はぁ!?お前何言っとるんじゃ!!町がこんな状況に……!」


「こんな状況になったのも、俺たちが海を本当に知らないからだ。

そのためにも俺は海へ出る」


「じゃが、ここはお前の育った町じゃろうが!」


「もちろん残りたい気持ちはあるさ。けど!それじゃなんも変わんねえ!

これからの港を守るためにも知らなきゃいけないんだ!」


「ぐむ….!だ、だが商船や漁船以外の航行は許されておらん!それはどうするつもりじゃ!?」


そう。

それがアルマンドラ大陸の掟で、海を邪魔するものだ。


過去になにがあったか知らないけど商船と漁船以外の船はならず者扱いされちまう。

海の賊、海賊だ。


「……わかってる」


「なら!」


「だったら、なってやろうじゃねぇか!海賊に!

海を!果てを!!

この目で見て、そして港を守るためによ!」


「なっ……!」


ルルド爺が絶句する。

そりゃそうだわな、なんたって犯罪者宣言したんだ。

でも、これは譲れない。


港の今後のために、なにより前世と今の夢のために。


「なぁ、ルルド爺。あんたも一緒に行かないか?」


「……はっ?お前、言うに事欠いて!

ワシにそれを言うか!」


「ああ!あんたを置いていくのは心配だ。このままだと町と心中しそうだし。

でも、ルルド爺が来てくれんなら、すげぇ安心できんだよ!

この町も港も、俺1人の記憶だけじゃないって!

だから、一緒に行こう!」


「~~~~っ!!」


そう言ったら歯を食いしばりながらコロコロ表情を変えている。

怒り?呆れ?懐かしさ?

なんだかよくわからんが、百面相みたいでちょっと面白い。


そしたら盛大な溜息をついてきた。


「はぁ~~~~」


……なんか急に老けた様に感じるな。

疲れてんだなぁ。


「まったく、誰に似たのやら……。

わかった、ワシも海の男じゃ。

お前と一緒に行こうぞ!」


「よっしゃ!」


「ただし!」


おん?

なんだ?


「町の連中を弔ってからじゃ。それから船の修理。

それでよいな!?」


ルルド爺……。


「もちろんだ!親父もお袋も皆んなも、ゆっくり寝かせてやってからだな!」


悪りぃな皆んな。

ちょっくらでかけてくるからよ。


俺たちの帰りを待っててくれ!

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