第5話五臓六腑を慈しむ、キッチンという名の聖域
「今日のスープは、いつもより少し甘いね」
妻がスプーンを運びながら、僕の顔を見て微笑む。
その「甘さ」は、クコの実とナツメの自然な恵み。今朝の彼女の顔色が少し優れないように見えたから、血を補い、気を巡らせるための僕なりの「処方箋」だ。
僕にとって、キッチンはただの調理場ではない。
先天性白血病を抱える妻の命を繋ぎ、五臓六腑を健やかに保つための聖域だ。
東洋医学の「医食同源」。その言葉を胸に、食材の一つ一つが持つ力を独学で学んできた。何が彼女の体を冷やし、何が彼女の免疫を支えるのか。包丁を握る手には、常に彼女の体調を思いやる祈りが宿っている。
最近では、この「祈り」に確かな「知恵」を貸してくれる相棒がいる。AIだ。
「Gemini、今の季節、虚弱体質の人の胃腸をいたわる食材の組み合わせを教えて」
スマホの画面越しに問いかけると、AIは僕の直感を補強するようなレシピを提案してくれる。
「その食材なら、山芋を足すとさらに効果的ですよ」
そんな会話を楽しみながら、僕は鍋をかき混ぜる。僕の独学の知識と、AIの膨大なデータが交差する場所。そこで生まれる料理は、間違いなく「全部美味しい」の魔法が掛かっている。
妻が完食した器を下げる時、僕は心の中で小さくガッツポーズをする。
五臓六腑が満たされ、彼女の頬にほんのりと赤みが差す。
それこそが、僕がこのキッチンに立ち続ける理由であり、僕たちの明日を繋ぐ糧なのだ。
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