第11話 この世界におけるイカ臭の扱い

「いててて……アレだけ啖呵切って治癒魔法のお世話になるのはダサいからそのままにしてるけど……まだちょっと痛いな……」


 僕はサスサスと金玉を擦りながら自分の部屋のベッドで寝っ転がっていた。

 見る限り特に異常はないし、少し休めば治る程度の傷にまで被害を抑えることができたのは、我ながらかなりナイスだと思う。


 ……薄氷の上の戦いだった。

 僕の金玉の耐久力が勝つか、メスリスさんの金玉への執着心が勝つか……少しでも何かが違えば勝敗は変わっていたことに間違いはない。


 僕は負けるわけにはいかないんだ。

 増長して油断するのが一番マズイ。


「自由の身になってハーレムを作る。その日まで僕は絶対に勝ち続けなきゃいけない」


 何かの組織に隷属されたままでいるのは、たとえ快楽を享受できたとしても危険だと僕は考える。

 僕という存在の所有権はここヌルシアムのオーナーが握っていて、僕はこの世界の奴隷の仕組みによりオーナーの命令には逆らうことができない。


 だからこそ、もしもこのヌルシアムで僕の望むようにひたすらエロいことができたとしても、一生飼い殺しされるのが運の尽きで、僕の自由意志はそこには介在しない。

 そんなの嫌だ。


 折角異世界に来たんだ。

 僕はこの世界を自由に満喫しつつエロいことがしたい。


「まだ良いのはオーナーが強権を振るって奴隷に好きなことをしている……なんて噂は聞かないことかな」


 どうやらヌルシアムのオーナーはやろうと思えばできるのに、奴隷主の立場を使って奴隷たちと酒池肉林……なんてことはしないらしいのだ。

 うーん、ヌルシアムの運営を考えると実に正しい選択だよね。僕の対戦相手の決め方といい、何だか本当に話が合うような気がするんだよなぁ。


「この世界に来てからエロトークができていない。……したら私がしてあげるとか言いそうな面々しかいないのもあるけど」


 今の今まで2戦して、僕は前の世界じゃ考えられないほどの美人、美少女とエロいことをしてきたわけだ。

 それに満足感が無いと言えば嘘になる。

 

 現に僕の部屋は若干イカ臭いからね。

 前の世界の時も休日は連続16連射とかカマしてたし、何だか転移してから性欲が増々上がっている気もする。


「よぅし、次の試合も頑張るぞ」


 パシン! と太ももを叩いてやる気を見せる僕だったけれど──、


「〜〜っ!!」


 その振動で金玉の痛みが襲いかかってきて僕は悶絶した。


☆☆☆


 翌日の朝、コンコンとノックの後に声が聞こえた。


「オーナーより報奨金についてのご説明があるそうです。こちらに」

「おっ、分かりました。今行きますね」


 立ち上がって扉を開けると、そこにはピョコンとウサギの耳が生えたメイド服の美少女が立っていた。

 長い耳とまん丸の尻尾が特徴的な以外は、鼻筋の通った怜悧な美人……といった印象だ。

 僕と話す時も性欲を感じることはなく、いつもスンッと無表情のまま会話をこなしてくれる。


 僕に硬化魔法を教えてくれたのもこのメイドさんで、表情とは違い意外と優しいというのも知っている。


「どうもどうも、こんにちは」

「ええ、こんにち────っ!?!?」


 刹那、常に無表情な彼女の顔が歪む。

 そして、徐々に頬が紅潮したかと思えば、息を荒げて僕を睨みつけ始めた。


「ふぅ、ふぅ……ッ、くさっ……くさいにのにぃ……ふぅッ、はぁっ♡ な、なに……この匂い……媚薬みたい、な……はぁはぁ……♡」


「ど、どうしたんですか?」


 僕は小声で何かを呟きながら荒い息を吐く彼女に、すわ体調不良かと駆け寄った瞬間──、


「ぐはぁっ!!」


 ──蹴り飛ばされて部屋の中のベッドに着地した。お、お腹がくそいたい……!

 ……というかまったく一撃が見えなかった。


 足を構えてることから蹴ったのは間違いないのだけれど……恐ろしく速い蹴り、僕だから見逃しちゃうね……。


 ──しかし、そんな僕でも見逃さないものがあった。



「──うさぎさんのおパンツ……!!!」


 顔に反して可愛いもの履いてるじゃないか♣

 僕は勃起ポイントを加算させた。

 

「ハッ!? も、申し訳ありません。す、すぐに別の者を呼んできますので」


 するとウサギメイドさんは急に正気に戻ると、それだけを言い残してバタバタと焦りながらその場を去った。

 うーん、なんだったのだろうか。

 体調不良かな? 具合悪い時ってメンタルが落ち着かないし、獣人の何らかの本能が急に出て蹴っちゃってもまあ仕方ない。

 

☆☆☆


 そのまま数分待っていると、今度は猫耳の生えた人懐っこそうな笑みを浮かべるメイド服の女性が現れ、微かに動揺した表情を見せながら僕をオーナー室に案内した。


「これはあのコが動揺しちゃうのも無理はないですねぇ……特殊な訓練を受けてる私ですら完全に耐えるのは不可能ですし……くぅ、パンツが使い物にならない……」


 その際、ブツブツと何かを呟いていたけれど、生憎とお腹と金玉が痛い僕には何も聞こえなかった。

 

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