第9話 試合開始の音は高らかに鳴り響く

 ──あっという間に一週間が経った。

 この間に僕はひたすら部屋にこもってメスリスさん対策をしてきたわけだけど……どうしても万全とは言い難い。


 ただ、やれることはやった。

 自信と不安は半分半分。だけど僕は、彼女に潰された金玉たちを供養するために全力で勝ちに行くと決めている。


 今の僕に不安はあれど恐怖はない。

 溢れんばかりの闘志が宿っている。



『さあさあ始まりました!! ヌルシアム二回戦!! おおっと、一回戦目と打って変わって観客席はガラガラです!! それもそのはず! 期待の新人、ユウタ選手を相手するのは──あの──新人潰し! メスリス・ガキ・ゴールデンブレイカー選手です!!』


 先にメスリスさんが紹介され、右端の入り口からニヤニヤしながら彼女が現れた。

 解説さんの言う通り、なぜか今日は観客席がガラガラで、三万人は入ると言われているキャパに対して数百人程度しか人がいない。


『知らない人のために紹介しておきましょう!! メスリス選手は種付け奴隷剣闘士である男の子の金玉を潰すことが性癖!! リョナと言うわけでもなく、執拗に金玉だけを狙い潰すことから付いた異名は"新人潰し"!! 勿論、潰すのは金玉です!!』


 やかましいな。

 聞けば聞くほど異常性癖な気はするけど、僕は別に彼女の性癖自体を否定するわけではないのだ。 

 ただ罪悪感もなく風船を潰すような軽い感覚で、罪のない御キンタマ選手をぷちぷち潰して嘲笑うその性格が許せないのだ。


『そのため!! メスリス選手の試合ではヌくことができないと批判殺到!! 畢竟、彼女の試合では数少ないメスリス選手の同好の士、もしくは初めてのヌルシアム来場で絶望するご新規様しかいませぇん!!』


 だよね。

 というか数百人単位で金玉潰し興奮仲間が一応いるんだ。僕としてはそっちのほうが驚きなんだけども。

 まあ……広義的に解釈すればリョナだもんね。


『しかししかしぃ!! どうしても私は期待してしまいます!! ヌルシアム初出場にして、数十年破られなかった女剣闘士の敗北記録!! それを自らの実力で打ち破ってみせた期待の新人。此度も何か我々に新たな境地を見せてくれるのではないかと期待を!! ──その名はユウタ・ハイバラだぁぁああああ!!!!!』 


『うおおおおおおおお!!!』


 数少ないが熱心な歓声が聞こえた。 

 どうやら僕を応援してくれる層も今日は来てくれているらしい。嬉しい……か、一応。


 僕はその期待に応えるために手を振りながら闘技場に躍り出る。


「へぇ? 逃げずに来たんだ? きゃはっ♡」

「言ったでしょ? 敗北と痛みを君に教えてあげる、ってさ。その約束、僕は違えるつもりはないよ」

「ふーん……相変わらずナマイキな男……」


 メスリスさんはふんっ、と鼻を鳴らす。


 ヌルシアムにいる女剣闘士は敗北を知らない。

 だからこそ、こういう増長するメスガキタイプには敗北を突きつけるのが一番良い。


 そのために僕は計画してきたことがある。 

 まあ、競技内容次第だが……。


『今回の競技ですが……厳正なくじ引きの結果──あぁっとぉ!!! メスリス選手のホーム競技である【手押し相撲】です!!!』


 ……ふっ、情報を集めた僕はその競技を知っている。大方計画通りといったところかな。

 にしても身体接触がメイン競技になりがちだから相撲系競技ばっかりだなぁ。いやこれは相撲と言うのはかなり賛否が分かれそうだけど。


☆☆☆

ヌルシアム流手押し相撲ルール説明


・向かい合って立ち、押し合って先にバランスを崩し片方でも膝がつけば負け。また、指定された範囲内からの逸脱でも負け。

・3歩の範囲内であれば足が動いても良い。

・ただし、両者ともに手のひら以外の接触が可能。

・過度な暴力は禁止だが、過去メスリスさんが金玉を潰して失格になったことは無いので、治癒魔法でちゃんと治る怪我であれば大丈夫そう。


☆☆☆


 うーん、相変わらずのエセ競技。

 とりあえずは相手を範囲内に押し出すか、膝をつかせることができれば勝ちってことね。

 勝敗の付け方が本家よりルーズになった代わりに、身体的接触とある程度の暴力が許可されたバージョンってことか。


 金玉を潰すのは絶対に過度な暴力だと思う。



「きゃはっ♡ ごめんね? あたしの得意競技になっちゃったみたぁい。今からでも降参すれば優しく潰してあげるケドぉ?」

「ゆっくり潰されたほうが痛そうなんだけど……」

「じゃあひとおもいに潰してア・ゲ・ル」


 うーん、なんかメスガキってより語尾とか口調が若干古臭いオッケーバブリー感がある気がするんだけど、これはどうなんだろう。

 僕のメスガキの解釈が未来すぎるのか、はたまたやはりメスガキエルフ(103歳)のせいなのか。

 まあ、エルフは100歳で成人らしいからなぁ……成人女性の全力メスガキムーブは優しく見守っておこうかな。


『はい、それでは両者ともに下着になってください!』


 導入が雑だなぁ!!!

 脱衣の導入は丁寧にやれ、って古事記(AV)にも書いてあるのに。


 僕はやれやれと首を振りながら、前回豪快に脱ぎ捨てたのとは逆に、丁寧にまるで焦らすようにゆっくりと脱ぎ始める。

 

『な、なんだかエロいですね。男性の脱衣にエロシズムを感じるだなんて私は知りません!!! ですがエロい!! 帰った後に思い出してヌけるくらいにはエロい!!』


 僕はチラリとメスリスさんのほうを見ると──彼女は思ったよりガン見してた。口を微かに開けながら。


「ふーん……男性自体に興味がないわけではないんだね……」


 僕はヌギヌギしながら考察をする。

 あくまで第一の性癖が金玉ブレイカーというだけで、真っ当な性欲というのも存在しているらしい。

 

 ……いや、そもそも男を下に見ていることから、ナヨナヨしたこの世界の男はメスリスさん的にもしかしたら性癖じゃない可能性がある。


 だとすれば付け入る隙は十分にある。

 だって、これは元々僕が立てていた計画だもの。


『──それでは両者ともに円の中に入ってください!』


 僕は床に描いてある白い円線の中に入る。

 メスリスさんも入ってくるが、彼女は相変わらずバニーガールの姿をしているために脱衣は必要なかったようだ。

 僕はパンイチだというのに。


『それでは──試合開始です!!』


 チーン!!!


 ゴングが鳴った。

 その瞬間僕は、コンマ1秒の時間でフィルナさんのおっぱいに顔を埋めた時の感触を思い出して瞬時にガチガチフル勃起をかました。


 そしてそのまま僕は体の内側にある魔力を、僕のフル勃起したちんちんと金玉に集めて唱える。



「──【ファールカップの術】」


 試合開始から勃起まで1秒。 

 勃起から魔術を唱えるまで2秒。


 そしてメスリスさんが僕の金玉に手を伸ばすまで4秒──残念だったね、僕のちんちんはすでに──


 ──カッチカチフルアーマーだ。



「──潰せ、ない!?!?!?!?」

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