第5話 伝説の1日

「でもフィルナさんがあまりにも可愛かったので……本当は頬にキスするつもりだったんですけどね。……我慢できませんでした」


 ──僕はとりあえずビッチになることにした。


 コイツは急に何を言いだしたんだと思うかもしれないけれど、この目論見は僕がキス童貞をフィルナさんに捧げた時の彼女の反応で正しいと理解した。


 力では絶対に敵わない。

 僕は身の程を知ることができる系男子なので、を無駄に極めることは時間の無駄だと知っている。


 とにかく反撃の狼煙を上げるためにキスしてみたが、まさかこうまで動揺して腰砕け状態にまでなるとは僕も予想していなかった。


 今現在のフィルナさんは顔を真っ赤にして地面にぺたりと尻餅を付いていて、控え目に言って恋する乙女にしか見えない。

 

 うん、やばいめっちゃ可愛い。

 格好がエロいのも相まって勃起しそうになる。何とか堪えてるけど、僕のムスコがこんにちはしてしまうのも時間の問題だ。


 僕の装備してるパンツは貧相な布製であるため、僕のご立派様(自称)がご立派ァ! してしまった場合、普通にはみ出る。ハミチンである。



 まあそんなことは一旦置いておいて、あんなにオラオラ系だったフィルナさんが乙女になってしまうほど、恐らくこの世界では男性が主体となって女性にアプローチすることが無いのだろうと推測した。


 だからこそ──!!!

 僕はこのヌルシアムで女性にアタックしまくって油断を突いて勝つ!!! ぶっちゃけこの戦法しか勝ち目がない!!!



 ……あと個人的にエロいことをしたいという願望を叶えるには丁度良いかなって。

 エロいことをされる覚悟があってエロいことしてるわけだし。


「試合に勝つためというのは本当です。でも、フィルナさんが可愛くてキスしちゃったのは嘘じゃないですよ……?」


 僕は蠱惑的に微笑む……やり方が分からないのでとりあえずニコニコと笑みを見せる。

 嘘くさい感じで言ったものの、フィルナさんに吐いた言葉は大体本心だしね。下心を誤魔化さなくて良いのは僕にとっても楽である。


『おおっと!!! なんとここで! ヌルシアムでも実力派のフィルナ選手が腰砕きだぁ!! 全部集音魔法で丸聞こえだから羨ましいぞこんちくしょー!! ……え、てか本当にどういう状況? 男からキス? 待って私も脳が理解を拒んでるというか……え?』


 ここでようやく硬直していた実況さんが息を吹き返すものの、途中から困惑しすぎてよく分からない実況になってしまっている。ちょっとおもろいな。

 

「「これは……夢??」」


 観客たちも困惑しているのが僕目線から伝わる。

 ……うーん、男からキスをするのがそんなに珍しいの……? 貞操逆転世界だからってこうまで反応が顕著とはなぁ……。


「しょ、しょんなわけあるかぁ!! お、オレが可愛いなんてぇ! 見ろぉ! この尖った恐ろしい角を!!」

「僕的にはカッコよくてポイント高いんですよね、角って」

「み、見ろぉ! 腕とか足に生えてる人間とは思えない鱗をぉ!!」

「うーん、さっき触った時にスベスベで手触り良くて好きかもです。もう一回触ってもいいですか?」


 普通に口説くとか関係なく本心で答えていったら、なぜかフィルナさんは次の瞬間泣き始めた。

 え、なんか言っちゃった……? 意味分からん。


「ふえぇぇぇん〜!! なんだお前はぁあ!!」


 僕の二倍身長あるえっちなお姉さんが地べたにペタンとお尻をついて号泣……うーん、悪くないね。

 シコリティが高い。


 ……よし、このまま押し出せば勝てそうだね。

 初勝利はいただいた!!!!


 僕は泣いているフィルナさんに近寄ると、ぐっと力を入れて土俵の外まで押し出しにかかる。

 フィルナさんも僕が何をしようとしているか理解したみたいだけど、色々なことがあって体が動かないのか抵抗はない。


 僕のような貧弱な腕ではフィルナさんを押し出すことはできないはずだが、土俵に撒かれたローションが味方になって徐々に彼女を押し出していく。



『お、おおっとぉ!! 実況と観客が混乱してる間に試合が佳境に!!! まさか!! 負けてしまうのか!! 男に!!! こんなことはヌルシアムが始まって以来初めてのことかもしれません!! フィルナが押し出されていく! フィルナが押し出されていく!! 土俵際!! 土俵際だぁ!!!』


 も、もう少し……!!!

 ローションがあってもキツイことには変わりない! あとは思いっきり押し出しにいくだけ……!


「ま、まける……このオレが……男に……!!」


 フィルナさんがぼうっとした視線で虚空を見つめてる間に、僕は最後の力を振り絞って思いっきり押し出した瞬間──────




 ────ズルっと足元を滑らせ、半ばフィルナさんを押し倒すように土俵の外に出た。



 むにゅんっ♡♡♡



 僕の手がフィルナさんのおっぱいをむにゅりと揉んだ。がっつりと、サラシ越しに。

 あ、やわらか……え、すご……ふかふか……。


「あっ……♡」


 そして耳元でフィルナさんの嬌声が聞こえた瞬間、その場からバッと離れたものの、あまりにも刺激が強すぎて僕は土俵の中で仰向けになって気絶した。



 ────フル勃起しながら。



☆☆☆



『し、試合終了です!!! まさかのまさか!! こんなことがあるのでしょうか! いやだがしかし結果は歴然!! ローション相撲に勝ったのは──


 ──ユウタ・ハイバラだぁぁああ!!!』



『『『ええええええええ!!!!』』』


 会場は騒然とする。

 男がヌルシアムの競技で勝つなど、数十年前に事故で女剣闘士が自爆して負けた以来一回もなかった。

 あり得ないと、そう断じる出来事だった。


 だがしかしユウタは勝った。

 明確に勝利した。


 自身の二倍ある体躯のフィルナに。

 

『おおっと、ユウタ選手、なんとも羨まけしからん体勢から離れて仰向けに倒れ────んなっ!?』



『『『きゃぁぁぁぁああああああ!!!!!』』』

 


 刹那──天を衝く、巨大な山脈を彼女らは見た。

 それは股間山脈という山の頂上だった。


 この世界の男では決して登頂できない、激しく厳しい山々の頂。

 全ての女が追い求め、下山していった。

 いつからか、この世界の男は本能的に女を忌み嫌うようになり、勃起などという減少は幻想にまでなった。


 想像できるわけがない。

 忌み嫌っているはずの女に触れたことで───呆気なく登頂してしまうなんて。



 ユウタはたった一夜にして伝説になった。

 

「あ、あいつ……! 女に触られて勃つなんてじゃねぇか──!!!」


 ──変態ビッチとして。


 あと単純にちんちんがデカかったのもある。

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