第2話 地下

水の音が、先にあった。


滴るでもなく、

落ちるでもない。

一定の間隔で、

どこかを巡っている音。


その中心に、

小さな者たちがいた。


人形のようだと言われることが多い。

だが、人形ほど無機質ではない。


彼らは、

水守と呼ばれていた。


誰が名付けたのかは分からない。

名が必要になった時点で、

すでにそこにいた。



地下空間は、

建物によって区切られている。


木組みに似た構造。

角は丸く、

余分な装飾はない。


水路が通っている。

直線でも、

意味のない曲線でもない。


水は、

ただ循環している。


水守たちは、

合図なしに動く。

水の流れを見て、

音を聞いて、

みどりの様子を感じてから。


「今日は静かだね」


「うん」



水路のそばに、

一人だけ、動かない者がいた。


そこにいるだけで、

周囲が緊張する。


お姫様と呼ばれている。


本人が望んだ名ではない。

だが、誰も別の呼び方を思いつかなかった。


彼女は、水を見ている。

流れではなく、

止まっていないことを。


「上、掘ってる?」


「……掘ってる」


「来る?」


少し間があった。


「来るよ」


水の音は、

まだ、止まっていなかった。




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