第22話 第2問



りおの手が、私の体から離れた。


少しだけ、ホッとする。


でも、その安堵は、すぐに消えた。


「あ、そうだ」


りおが、何かを思い出したように言う。


「2問目の前にね」


「はい…」


「言い忘れたんだけどー」


りおが、楽しそうに笑う。


でも、その目は、笑っていない。


「1回、間違えると」


「間違えると…?」


嫌な予感がする。


「それまで獲得した時間が、リセットされちゃうからー」


「え…」


心臓が、止まりそうになる。


「リセット…?」


「うん。ゼロに戻るの」


りおが、あっさりと言う。


「今、1時間減ってるでしょ?でも、次の問題を間違えたら、元に戻っちゃう」


「そんな…」


「だから、気をつけてねー」


そう言って、りおは私の頬にキスをした。


柔らかい唇の感触。


でも、今は、それどころじゃない。


1回でも間違えたら、リセット。


つまり、24問全部、正解しなきゃいけない。


1つも、間違えられない。


「厳しい…ですね…」


「そうかな?」


りおが、首を傾げる。


「ファンなら、わかる問題ばかりだよ?」


「でも…」


「大丈夫。のぞみちゃんなら、できるよ」


りおが、私の頭を撫でる。


「信じてるから」


その言葉が、プレッシャーになる。


間違えられない。


絶対に。


「それでね」


りおが、にっこりと笑う。


「第2問、する?」


「今…ですか…」


「うん。それとも、後にする?」


後。


いつ出されるか、わからない。


りおの気分次第。


それなら、今やった方がいいかもしれない。


でも。


1回でも間違えたら、リセット。


せっかく獲得した1時間が、無駄になる。


どうする。


「どうする?のぞみちゃん」


りおが、楽しそうに見つめてくる。


私は、深呼吸した。


落ち着け。


ファンなら、わかる問題。


大丈夫。


きっと、大丈夫。


「やります」


「よし!」


りおが、拍手する。


「じゃあ、第2問」


りおが、真剣な顔になる。


ソファに座り直す。


私も、姿勢を正す。


緊張で、手のひらに汗をかく。


間違えられない。


絶対に。


「問題」


りおが、ゆっくりと言う。


私は、息を止めて、聞いた。


次の問題が、私の運命を左右する。


リセットされるか。


2時間減るか。


全ては、この答え次第だった。

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