恋愛モンスター生成アルゴリズム

イミハ

第1話 LOVEタイプ診断


 占いと診断は、人生を楽にしてくれる。

 少なくともユメは、そう信じていた。

「え、待って。これ当たりすぎじゃない?」

 大学のカフェテリア。

 スマホを覗き込んだユメは、思わず声を上げた。

 ——《LOVEタイプ診断:あなたは【恋愛モンスター】です》

「なにそれ、強そう」

 隣で笑ったのは、いつもの友達だった。

 ユメは肩までの髪を揺らしながら、画面を指でなぞる。

《恋に落ちると一直線》

《相手の言葉を信じやすい》

《理屈よりも“相性”を重視する》

「ちょっと、怖いくらい合ってるんだけど……」

 MBTI診断が流行ってから、世界はずいぶん生きやすくなった。

 人はタイプで説明できる。

 合う・合わないも、努力より先にわかる。

 LOVEタイプ診断は、その決定版だった。

「で、ユメ。相性最高のタイプ、誰なの?」

 画面をスクロールすると、名前が表示された。

 ——《あなたと運命的に相性がいいのは【KML-αタイプ】》

「……キメル?」

 その名前を口にした瞬間、

 まるでタイミングを計ったかのように、視線を感じた。

 少し離れた席。

 黒髪で、無駄のない身体つきの男子学生が、トレーを持って立っていた。

「……あ」

 目が合った。

「もしかして、LOVEタイプ診断やってる?」

 自然な声。

 自然すぎる笑顔。

「俺、キメルって言うんだけど」

 心臓が、軽く跳ねた。

 細マッチョ、整った顔立ち。

 いかにも“大学でモテるタイプ”なのに、どこか控えめな雰囲気。

「ユメ、です」

 それだけで、胸の奥が温かくなった。

「偶然だね。俺もその診断、作った人フォローしててさ」

「え、そうなんだ! 私、占いとか診断大好きで……」

 言葉が、驚くほど自然に続いた。

 趣味も、価値観も、驚くほど噛み合う。

 笑うタイミングまで、似ていた。

「……相性、最高らしいよ」

 冗談めかして言うと、

 キメルは少しだけ目を伏せて、微笑んだ。

「それ、信じていい?」

 ユメは知らなかった。

 その言葉の重さも、

 この出会いが“偶然ではない”ことも。

 LOVEタイプ診断は、

 恋を始めるためのものだと、信じていた。

 ——それが、終わりの始まりだとも知らずに。

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