第7話 夫婦河童


どれ位の時間が経っただろうか?


俺がウトウトしていると……


「終わったよ……」


片言の日本語で俺が雇ったタイ人の男性が話しかけてきた。


隣の部屋に行くと陽子は裸のままうつ伏せになり気絶していた。


顔から涙を流し、鼻水を流しながら、シーフには血がついていた。


これで良い。


「本当に悪いな……」


そう言うと俺は4人のタイ人の男と一緒に隣の部屋へと移動した。


今度は俺が頑張らないとな……


◆◆◆


俺の方の仕事を終わらせると今回の事をお願いしたタイ人の男性たちは去っていった。


体が痛い……思った以上だな……これは。


俺はよろけながら、陽子の元に向かい、横に腰掛けた。


陽子は起きていた。


「純也……酷いよ……」


「そりゃ、酷いに決まっているだろう? あれ程の事をされたんだ。その仕返しなんだから……それでこれからどうする? 俺の傍に居たいなら居ても良いし……別れても良い、なんなら警察に訴えてもいい! それだけの事をした自覚はある」


「ううん、私は最低の事したんだから、仕方ないよ。純也の傍にいる……だけど、純也の背中見せてくれる?」


「これでいいか?」


俺は陽子に背中を見せた。


「それで、これにはどう言う意味があるの……」


俺はタイ人の男性に陽子を襲わせた訳じゃ無い。


さっきのタイ人の男たちは彫師だ。


日本の彫り師は仕事が丁寧だが凄く時間が掛かる。


だけど、タイの彫師は仕事が速く数時間で大掛かりな図柄を彫れる者も多い。


しかも、今回お願いしたのは1人ではなく複数人で仕上げる特殊技術を持った人達に頼んだ。


だからこそ僅かな時間で背中1面に指定の図柄が彫りあがっている。


「これは夫婦河童……夫婦円満とか仲の良い恋人や夫婦が入れる刺青だよ。夫婦鯉にするか悩んでこれにした……こんな物いれれば、もう他の男はおいそれとは陽子を抱けないし、陽子だって浮気なんて出来ないだろう?」


陽子の事は好きだが……今回の件は許せなかった。


だから、刺青を入れた。


しかも、夫婦河童。


旦那がいる刺青女なんて、普通の神経じゃ抱かないだろう。


俺以外抱けない女にした……それだけだ。


「本当に純也は独占欲が強いんだから……まぁいいよ、元は私が悪いんだし……責任はとってくれるんでしょう?」


「まぁね」


「それなら良いけど……この説明頑張って、両親やおじさんたちにしてね」


「多分大丈夫じゃない……かな」


「まぁ、うちの親もおじさんもおばさんも……あの性格だから、そうかもね」


きっと大丈夫だよな……

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