第27話 校長の判決
体育館。
出口へ向かっていた
スティーブン先生の足が、
止まる。
校長の声だった。
「……待て」
短い一言。
だが、
命令だった。
スティーブンは、
振り返らないまま言う。
「……もう終わっただろ」
校長「いいや」
「まだだ」
校長は、
壇上から降りてくる。
一歩ずつ。
逃げ道を
塞ぐように。
「君は」
「去ると言った」
「それは
認める」
一拍。
「だが」
「逃げる順番が
違う」
スティーブンの拳が、
わずかに震える。
校長は、
真正面に立った。
そして――
宣告する。
「このクラスが
卒業するまで」
「君は
教師を続けろ」
体育館が、
ざわつく。
教頭「……!」
里中「……え?」
田中「……マジか」
スティーブンは、
ゆっくり振り向いた。
「……冗談だろ」
校長「冗談ではない」
「命令だ」
校長は、
淡々と続ける。
「君は」
「過去から
逃げなかった」
「だからこそ」
「未来からも
逃げるな」
黒板の言葉を、
指で示す。
選べ。
殴るな。
逃げるな。
「自分で書いた言葉だ」
スティーブン「……」
校長「卒業まで」
「一人も
見捨てるな」
「一人も
壊すな」
「一人も
死なせるな」
一つずつ。
重く。
「それが」
「君に与える
最後の仕事だ」
スティーブンは、
歯を食いしばる。
「……終わったら」
声が、
低い。
「どうなる」
校長は、
目を逸らさず答えた。
「刑務所に入れ」
体育館が、
完全に静まり返る。
校長「消えない罪は」
「消えない」
「だから」
「償え」
「教師として」
「最後まで」
里中が、
叫ぶ。
「そんなの……!」
「それじゃ
先生が――」
校長「だからだ」
遮る。
「楽には
させない」
「英雄にも
しない」
「許しも
与えない」
「責任だけを
与える」
スティーブンは、
天井を見上げた。
長い、
長い沈黙。
そして――
笑った。
乾いた笑い。
「……最低だな」
校長「承知の上だ」
スティーブンは、
生徒たちを見る。
一人ずつ。
逃げない。
「……聞いたか」
「俺は」
「お前らの卒業と
一緒に
消える」
田中「……」
里中「……」
桜愛が、
唇を噛む。
スティーブンは、
校長に向き直る。
「いいだろ」
「やってやる」
拳を握る。
「最後まで
間に合う」
「その後で」
「檻に
戻る」
校長は、
小さく頷いた。
「……それでいい」
「これより」
「スティーブン・ハートネット」
「期限付きで
教師に復職する」
教頭「……!」
スティーブンは、
背を向けた。
今度は、
出口じゃない。
教室の方向へ。
「……次の授業だ」
「遅刻すんなよ」
誰も、
笑わなかった。
だが。
全員が
立ち上がった。
最低な教師は、
最も重い判決を
受け入れた。
それは
救済ではない。
責任という
終身刑だった。
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