傲慢な男

俺が、女に屈するなんて考えられない。


無視を決め込むなら、俺も黙ってやろう。

そう思った、はずなのに──


「おい、女。

お前は、何がしたいんだ?」


優位に立ちたかった。

たとえ檻の中にいようと、

賢いのは俺だ。

強いのも、俺だ。


「なーんも、したくない!」


女は天を仰ぐのをやめ、

俺を真っ直ぐ見つめて、笑った。


その言葉が、さらに俺を苛立たせる。


「じゃあ、なんだよ!

これは!

帰せよ!

意味わかんねーよ!」


怒鳴り叫ぶ俺を、

女はただ、楽しそうに見ていた。


腹が立つ。

この女の、余裕が。


罵詈雑言。

思いつく限りの言葉を、女に浴びせた。


それでも女は、

俺から目を逸らさず、笑っている。


「疲れないのー?」


───は?


何を言っている。

これだけ侮辱されても、

まるで効いていない。


理解が、追いつかなかった。


「ゴホッ……ゴホッ」


さすがに叫びすぎた。

喉が、焼けるように乾く。


檻の中に、飲み物はない。


「おい、女。

飲み物、よこせ」


当然の権利だ。

そもそも、捕えられる理由が、俺にはない。


女は、少し離れた場所から立ち上がり、

俺の目の前に来た。


「お願いできたら、あげまーす!」


上目遣いで、俺を見上げる。

遊ぶような、その仕草。


腹が立った。


「……ざけんな!」


喉が痛む。

乾きで、声が掠れる。


水が、欲しい。


女にお願いなんて、

絶対にしたくなかった。


それなのに──


「……水を、ください」


口が、先に動いた。


女は、くすっと笑った。


その瞬間、

視界が、途切れた。


目を覚ましたとき、

俺は知らない公園のベンチに座っていた。


手には、ペットボトルの水が握らされている。


反射的に、無我夢中で飲み干した。


あの女は、誰だったのか。

なぜ、俺は捕らえられたのか。


疑問だけが、脳裏に焼き付いている。


夢だったと、思いたかった。


それでも、

喉に残る乾きと痛みだけが、

すべてが現実だったことを、静かに告げていた。

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