第12章 雨の試練

その日、雨は激しく降り続け、校庭や小道を打ち付ける音が耳に響いた。美咲は教室の窓にかじりつくように外を見つめ、雨斗が来るのを待っていた。


「遅いな……」胸の奥がざわつく。いつもなら落ち着く雨音も、今日はどこか緊迫感を増して感じられた。


雨斗が廊下から現れたとき、顔にはいつも以上の真剣さが浮かんでいた。「美咲、今日は重要な話がある。君にも覚悟してほしい」


「重要な話……?」美咲は少し息を呑む。心臓が高鳴る。


雨斗は小道を抜け、秘密の小屋に向かう途中、雨の中で立ち止まった。「僕の過去に関わることが、現実の世界にまで影響を及ぼすかもしれない」


美咲は思わず手を握る。「雨斗……私、何があっても一緒にいる」


雨斗は微笑むが、その瞳には覚悟と決意が宿る。「ありがとう。君の存在が僕に力をくれる。だから、今日は君に見せなければならないものがある」


小屋に着くと、雨斗は窓の外を指さす。「見えるかい?」


美咲が外を見ると、雨に濡れた小道の先に、以前現れた少年の姿があった。彼の表情は険しく、雨斗に向けてじっと見つめている。


「来たか……」雨斗の声に、静かな緊張が漂う。「この試練を乗り越えなければ、僕たちの関係も危うくなるかもしれない」


美咲は一瞬怯えるが、すぐに決意を固める。「大丈夫、雨斗。私は信じてる」


雨斗は彼女の手を握り返し、静かに頷く。「ありがとう。君と一緒なら、どんな試練でも乗り越えられる」


雨の中、二人は小道に向かって歩き出す。水たまりを跳ねる音、雨音に混ざる心臓の高鳴り――すべてが試練を迎える舞台となる。


「過去の影は消せない。でも、君となら前に進める」雨斗の声は強く、確かに響く。


美咲は息を呑む。「うん……一緒に進もう、雨斗」


二人の手が強く絡み合い、雨音が絶え間なく響く中、雨斗の過去と現在が交差し、二人の絆が試される――雨の日にしか見えない、特別な戦いの幕が上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る