タマゴッコ【カクヨムコン11お題フェス:卵】
雪うさこ
第1話
学校が終わりのチャイムが鳴った。背伸びをしてから、ロッカーに駆け寄り、ランドセルを掴むと、急いで机に戻った。
ランドセルを机に投げつけるように置くと、隣の席のミナミが「乱暴しないでよ。怖い」と言った。
女はめんどくせー。いちいち、細かいことを言ってくるから。
先週はずっと休みでいなかったらよかったのに。また出てきたんだ。
ミナミは「マナトくんはいつもそう。昨日の理科の時間だって……」と怒っているが、関係ない。前の席のアサヒの背中を突く。
「なあ、今日は帰ったらすぐに校庭集合な」
「え、今日はちょっとなあ」
「なんだよ、遊べないの? 用事?」
アサヒは頭をかく。
「昨日、放置してたら、タマゴッコ死んじゃったから。最初からやり直さないと」
「んなもん、いつだってできるじゃん」
タマゴッコっていうのは、最近人気のあるおもちゃだ。卵のカタチをしていて、それをあっためたり、撫でたりすると、動物のおもちゃが中から出てくるんだ。卵はちゃんと面倒をみてやらないと、あっという間に冷たくなって死んでしまう。死んだら、最初からやり直しってやつ。
生まれてきた動物も、ごはんを食べさせたり、うんちをとってやらないと、病気になって死ぬ。そうなったら、動物を卵に戻して最初からやり直しだ。
みんながやっているから買ってもらったけど、面倒なおもちゃだ。日中学校に来ている間に、死んじゃうことも多いし。小学生には育てるのは難しい。だからこそ、クラスで誰が一番に動物を孵化させるかって競争になっているんだけど。
「別にいいじゃん。そんなの。いつでもできる」
おれとアサヒの会話を聞いていたミナミがまた口を挟んできた。
「おもちゃだって、死んじゃったら可哀そうじゃない」
「なに言ってんだよ。お前。おもちゃはおもちゃだろう?」
「死ぬってことは、そんな簡単なことじゃないんだから」
「へえ、そうですか」
おれは舌を出してアッカンベーをして見せる。すると、珍しくミナミの目から涙が落ちた。彼女は静かに泣きはじめたのだ。
なにを言っても泣くヤツじゃないのに。
一緒にその場にいたアサヒはバツが悪そうにそっぽを向いた。
そのうち、ミナミの後ろの席のサラが気がついて「あー、マナトくんがミナミちゃんを泣かせた」と大騒ぎし始める。
「うっせー。おれはなんもしてねーし。こいつが勝手に泣いているだけだろ!」
いくら言ったって、女子がおれの話を聞くはずはない。すぐに異変に気がついた担任が飛んできて、おれはめちゃくちゃ怒られた。
どうせいつものことじゃん。別にいいけどさ。
でも怒られたことよりも、ミナミの涙が胸に突き刺さって、なんだから嫌な気持ちだった。
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