第6話 おしゃれな街

 友達になったユルルと一緒に旅をすることになった、セリナとトルテ。

 魔法でさみしいので森から出られないようにしていたユルルは、トルテの優しさに惹かれそっと魔法を解いた。


「あっ……突然旅にでたらお母さんお父さんが心配しちゃうかも……」


 ユルルはあることに気づき、うつむきながらスカートの裾をクシャッと握った。


「それもそうね。まず、親に確認してから行きましょうか」


 二人より年齢が4、5歳高いセリナは、膝に両手をつき、ユルルに目を合わせるように少し屈んだ。

 

「きっと……無理だと思う」


 少女はそのまま眉をひそめ、今にも泣きそうな顔でそう言った。


「聞いてみよう!きっと大丈夫!」


 トルテはまだ結果はわからないと、自信を持った顔で言った。


「どうしてそんなことが言えるの?」


 少しふてくされた、さっきまでのような不穏な雰囲気を放った。ユルルの後ろからつよい圧を感じる風がピューッと吹いた。

 風を真正面に受けながら、


「だって、まだ確認してないでしょ?うまくいくかもしれないじゃん!」


 トルテのあんまりにもポジティブな返答に、クスッとユルルは笑みがこぼれる。


「ふふ、それもそうね!行ってみようかな。不安だけど」


「うん!行こう。困ったら俺を頼ってね!」


ユルルは重苦しい雰囲気を解き、花が咲くような柔らかな様子で答えた。


(あの子、すごいわね……扱いに長けてるわ)


 そうこう話しが弾む間に森を抜けてすぐ、街に着いていた。


「結構大きいねー!」


 田舎育ちのトルテははじめてみる規模の大きな街を見て、思わず放った。


 街の中にはそこかしこに裕福そうなドレスやスーツを着た人がお茶を飲んだり、思い思いの時間を過ごしていて、

 家並みは白い外壁にレンガで積んだ屋根、整えられた地面、どこを見ても上品で、息を呑んだ。


「もしかして、この街の中に家があるの?」


「そうだよ!」


 本当にユルルがお姫様なんだと自覚し、トルテの動きはぎこちなく緊張していた。


 迷路のような、でも狭くなく広い街中を透き通った川が流れていた。

 整備された赤茶色のレンガを踏みしめながら、大きな街にはこんなにも果物屋や酒場、宿屋など色んな設備があるのをトルテははじめて目にした。


 ユルルに案内され街の中をキョロキョロしながら進んでいると、自分の数倍高さがある端が鉄でゴツゴツした木の門の前についた。


「はっ!ユルル様、そちらは……どなたですか?」


 門番は警戒したのか交互に両隣の2人に目をやり、問いを投げかけた。


「この二人は私の友達なの!」


 門番は少しはっとした表情をし自分の不用意な発言を振り返り、


「友達――ユルル様のお友達様ですね!どうぞ中にお入りください!すみません」


 かしこまり足を揃え頭を深く下げた。

 門番は2人がかりで門を押し、トルテ達に通るように伝え、三人は門をくぐる。

 すれ違う際、とても小さな声で門番はこう囁いた。


「よかったですね。ユルル様」


 ユルルはほんの一瞬目を合わせ、ニコッと幸せそうに微笑んだ。

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