第55話 【公文書】ミレットの謁見2
これは、ギルド調査員のミレットがギルド長に謁見した際の文書である。
【ミレットの調査報告】
日付:王暦125年10月26日
担当:速記官アイル
ギルド長:
「アイル、記録を頼む。ミレット、体調はどうだ? 最近、顔色がすぐれないようだが」
ミレット:
「正直に言うと、あまりよくありません。頭痛や腹痛に悩まされています。まあ、薬を飲めば、なんとかなりますよ。きっと」
ギルド長:
「その過信が、いつか身の破滅を招く。君は無理をしすぎだ。少しの間、休暇を取るのはどうだ?」
ミレット:
「休暇、ですか……? でも、それでは調査員が足りなくなるはずです」
ギルド長:
「心配するな。今回の試験で、合格者がでた。新米だが、立派な調査員だ。彼らが穴を埋めてくれる。君が無理する必要はない。自身をいたわりなさい。責任感が強すぎるのも問題だな。アイル。あとから休暇許可証を持ってきてくれ」
アイル:
「かしこまりました。すぐに手配します」
ギルド長:
「助かるよ。それに引き換え、前任のワットは口出しが多かったからな。速記官として失格だった……。よし、ミレット。帰ってよろしい」
ミレット:
「はい……」
ギルド長:
「そうだ、これを渡そう。宿屋での食事券だ。好きな品を食べるといい。弱った体には、食事と休養が一番だ。おすすめは『塩見の焼き魚』だ。『安らぎの村』特産の塩がいいアクセントになる。無理強いはしないがね。では、また会おう」
【速記官の私記】
ギルド長が僕を褒めてくれた! でも、他の人から聞いた話だと、前任のワットさんも優秀だったらしいけど……。まあ、人によって評価は変わるから当然か。それよりも、僕も塩魚が食べたい。あとから、宿屋に行こう。
【研究員のメモ】
私の腹痛は消えた。代わりに、体が異常なまでの飢餓感を覚えている。
目の前のシチューは、もう冷え切っているというのに、異常な熱を発している。
【研究員のメモ:追記】
学生が「ギルベルト様から、お魚の食事券ですよ」と、私の机の上に魚の骨を置いた。骨には「安らぎの村」特産の塩がたっぷりまぶされている。私は、それを無言で貪り食う。薬を飲めばなんとかなる? 違う。塩を食べれば、なんとかなるのだ。私もまた、優秀な「村人」になった。
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