第28話 【公文書】受付記録

【10月20日:業務日誌】

受付担当者:ミーア

天候: 晴れ

新規受入組数:4組

特記事項: 本日、3組が「安らぎの村」へ出発。1組は1泊の滞在を希望。装備品一式はギルド規定により査定完了済み。

備品管理: インク補充、広報用チラシ100枚印刷

備考:本日、行方不明者の遺品が2組分届けられた。本日も異常なし。



【10月21日:業務日誌】

受付担当者:リズ

天候: 晴れ時々曇り

新規受入組数:6組

特記事項: 今日、3組が1泊の滞在を希望。残り3組は「安らぎの村」へ。ちょっと急ぎすぎじゃないかな……。死んでもしらない。

備品管理:羊皮紙補充、冒険者用の識別タグ50個、宿泊券20枚

備考:今日、変な人が来た。遺族でもないのに、「遺品を見せろ」って。王都から来たらしいけど、部外者に見せるわけにはいかない。それに、保管しているのはギルド。私たちは一時的に預かるだけだから、何の権限もない。それを伝えたら、大人しくなった。でも、何か企んでそうな予感。名前は、ルキアだったかな。念のため、ギルド長に伝えようかな……。本日も異常なし!



【研究員のメモ】

私の隣でガイドブックを読み耽っている学生が、ブツブツと「本日も異常なし、本日も異常なし」とリズと全く同じトーンで繰り返し始めた。彼の喉元を見て、私は息を呑んだ。喉の皮膚が、まるで「識別タグ」を差し込まれたかのように、四角く不自然に盛り上がっている。思わず、自分の喉を触ったが異常は見当たらなかった。

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