第23話 【個人手記】調査員ミレットの記録9

 なんとか、48年前――王歴77年の遺留品リストを手に入れた。これによると、10月7日の行方不明者がロゼーヌさんのお父様みたい。まあ、行方不明ではなくて、後から戻って来たんだけど。その遺失物の中にあるアルバムが気になる。「ギルベルト」っていう名前、どこかで聞いた気がするんだけど……。



 他に気になるのは管理人の私記。確かに、回収地点の座標が近い。つまり、ここに何かがいたってこと?



 そして、最大謎は、なぜ、衛兵が倒れていたか。9年前の資料を漁るふりをして、こっそり48年前の棚に移動しようと思ってた。手間が省けたけど、誰か別の人が動いてるのかも。その人が何者なのか。それも謎ね。



 ここまでの話を整理すると、こうかしら。



・王歴77年――つまり、ダブルセブンの災厄の年にロゼーヌさんのお父ロアーさんが「安らぎの村」を経由して、洞窟に入った。同行したのはギルベルトなる人物。そして、ロアーさんは戻ってきてから16日後に亡くなった。季節は秋。

・管理人の私記によれば、回収座標は近い。




 こんなところね。あとは、明日ギルドに行ったら、ここ1か月の行方不明者のリストをチェック。座標の確認。そして、犠牲者が出ないことを祈るだけ。……でも、犠牲者が出ないと、「安らぎの村」に行けない。この矛盾、何とかならないかしら。もう寝よう。今日は、神経を使いすぎたから。



※追記:頭がボーっとする。なんか、ここ最近体調が悪い日が続く。もしかして、風邪かな……。



【研究員のメモ】

資料にある座標を現在のGPSで照合したところ、村のはずれにある古い井戸の底を示していた。昨晩、井戸から「熟成した肉」のような匂いが漂ってきたため、作業を一時中断。随行していた大学院生の1人が、急に「喉が震える」と訴え、帰宅後に失踪した。



【研究員のメモ:追記】

失踪した学生の部屋を調べたが、荷物はすべて残されていた。ただ一つ、彼が大切にしていた『家族アルバム』だけが、中身を謎の液体で溶かされた状態でゴミ箱に捨てられていた。

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