2章:まっ赤な抗争

血の匂いが鼻腔を刺す。熱気が肌を焼き、汗が滴り落ちる。

静寂の白は消え、代わりにまっ赤な世界が広がる。


一人――闘いの渦中に立つ。

拳が叩きつけられ、叫び声が空気を裂く。痛みと快楽が同時に身体を満たし、理性は遠くへ押しやられる。


絶望の熱が血管を駆け巡る。だがその熱は、時に妖艶な快楽と交じり合い、理解できない快感を生む。

「これが……生きているってことか」


敵も味方もない。あるのは衝動だけ。

叫び、蹴り、血が飛び散る瞬間、世界は赤い洪水となる。その中で、一人だけが自分を見失わず、衝動に身を任せる。


戦いが静まると、赤は生命そのものだと知る。

白と赤、静と動。すべては連鎖であり、一人の心はその渦の中で揺れ続ける。


赤の熱が冷めていく中、彼は初めて自分の鼓動と呼吸を意識する。

それは、白の静寂と赤の激動の間に立つ、自分だけの時間だった。

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