第二話 ……菜花。

Mission 004 一人称は、やはりボク。君もまた。


 ――君の目に、ボクはどう映っているのだろう?



 ボクは、君のことを知っている。けれど、君はまだ、ボクを知らない。


 長い黒髪に和の面影を宿した顔立ち。それがボクの〝仮面〟だった。でも、もう必要なくなった。君――千歳ちとせと再会できた今、僕は素顔のままでいられる。


 仮面を脱ぐように、髪を解いた。


 正確には解ける程、地の髪は長くなかった。鬘を脱いだことによって鏡の中の自分が、少しだけ軽くなった。少なくとも、そんな気がした。


 君は、栗色のボブに青い瞳。色白の肌。ボクたちは、瓜二つ。けれど、

ただ似ているだけじゃない。僕たちは――命を分け合った存在。


 千歳は一度、死んだ。


 サバイバルナイフで深く刺されて……


 でも、ボクが助けた。ボクの血で、彼女を繋いだ。


 それができたのは、ボクたちが〝一卵性双生児〟だったから。



 心臓の位置も、臓器の配置も、普通の人間とは逆。それが、ボクたちの〝特別〟の証。


 実は……ボクも、つい最近まで知らなかった。でも知ってしまった今、もう迷わない。


 ――君が、なぜ刺されたのか?


 ――誰が、君を狙ったのか?


 ――そして、君の中に眠る〝何か〟のことも。



 ボクは、全てを覚えている。


 でも、まだ言えない。


 言葉にした瞬間、君が壊れてしまいそうで。


 だから僕は、ただ手を差し出す。


「一緒に、生きよう」って。


 君の手は、少し震えていた。でも、ちゃんと握り返してくれた。


 その温もりを、ボクは信じたいと思った。


 ボクたちは、再び手を取り合った。ここから、再起動する。


 二人揃えば、地上最強のエージェントになれる。それが、ボクたちの宿命……


 けれど、僕は決めている。復讐のためじゃない。誰かを殺すためでもない。


 ボクは何があっても〝殺さない〟


 命を奪うこと、正義なんてない。


 だからこそ、ボクはこの学園に賛同した。この場所で、情報屋稼業を通じて、千歳の中にある〝殺意〟を、少しずつ溶かしていくために。



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