考えない男と、考えすぎる私
紡 恵 (つむぎ めぐみ)
オセロゲーム
俺たち、もう、別れよ・・・
それを言った秀樹の声は
違った意味で声が震えていた
私はそれを無表情のまま傍観者のようにながめていた
秀樹は自分の仕事に対する姿勢を全て反論されたと思って、この言葉が出てきたのを私は知っていた
「分かったよ。それじゃあね。」
私は笑顔で軽く手をあげた。
何度も喧嘩を繰り返してきたが、彼がはっきりと口にしたのは初めてだった。
「恵美ちゃんが冷めてるから」
彼はいつもこうだった。
恵美ちゃんが会いたいって言ってるから!
恵美ちゃんが愛してくれるから!
恵美ちゃんが冷めたから!
結果をすべて私のせいにしてるのを、彼は自覚無しで投げてくる。
わざと言ってみた
「私が振られたってことやんな?」
その途端、秀樹の表情が、さっきとは別人の様になったのが面白かった。
「あいつが振りよった!って言われるのが嫌や!」
この後に及んで、周りからの評価を気にしている。
言う事が二転三転するのは秀樹の生き方の癖なんだろう。
さっきとは打って変わって
「恵美ちゃん、好きやで。
ほんまに大好きやで。」
・・・どっちなん?
私の気持ちよりも先に
周りの評価を気にするのも、また彼の癖なんだろう。
白黒はっきりさせたい2人が、
いつまでたっても
グレーンゾーンのまま。
そんな恋愛もありなのか?
自問自答を繰り返しながら
結局のところ、私も彼も
楽しんでいるような気がする。
まだ熱いマグカップを見ながら
吐きかけた息をを飲み込んだ。
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