第7話 【7】シュヴァルツィア魔帝国城
――――中世ヨーロッパのような城壁に囲われた都市。
「ここがシュヴァルツィア魔帝国の中心……魔帝都だ」
「わぁ、すごい!まさにファンタジーの世界だ!」
城壁の高さですら桁違いである。
「えぇと、ファンタジーな世界?」
レベッカが首を傾げる。
「ええと、俺の前世ではそう呼ぶと言うか」
「ふっ、ふふっ」
俺の記憶を知っているルオさんが吹き出す。
「王都にもきっとファンタジーな食事がいっぱいだぞ」
それはちょっと楽しみだけど。
「じゃぁ私がオススメをセレクトしてあげるわ!美味しいフードを売ってる露店がたくさんあるのよ?何たって魔帝都だもの!」
人間の土地で言えば王都である。確かにたくさんの露店もありそうだし、物流も発達していそうだ。だがそれゆえに迷ってしまいそうだから……レベッカに紹介してもらえるのはありがたい。
「お金ならアルが出しますので」
「え?俺なの?」
ルシルさんの言葉にアルさんが苦笑する。
「ま、いいか。ルオの次に年上だし」
そうなんだ……アルさんはルシルさんよりも年上。魔人だから見た目だと分からないのだが。
ルシルさんが冒険者の身分証を見せれば難なく門の中に入ることができた。
魔帝都内に入れば魔族も多いしほかの種族もちらほらと見掛ける。活気に溢れ多くの露店やマーケットが開かれているようだ。
「ロジーはお肉とお芋どちらが好きかしら?」
「……んーとそうだな。道中はお肉も多かったし芋も興味あるかも」
「分かったわ。ならアレはどうかしら?あげいも串なの!」
レベッカが指差した方向には確かに美味しそうに揚げられた芋が串に2、3つ連なっている。
「わぁ、美味しそうだ」
「でしょ?」
「なら人数分買おうか」
アルさんが会計を済ませてくれて俺たちはいざあげいもを食さん!
「んんっ、美味しいっ!」
衣はどこか甘くて美味しいし中の芋もホクホクしていてバターが香る。じゃがバターあげと言ったところ。
「でしょ?私も好きなのよ」
「うん、俺も好きだよ」
道中の肉串も美味しかったけどこう言うのもなかなかいいかも。
そのほかにもレベッカに勧められて歩きながら食べられる菓子をシェアして楽しく魔帝都を歩けた。
そうしていつの間にか目の前にあったのは……いかにもなファンタジーな巨大な城だった。
「すごい……ここは」
「シュヴァルツィア魔帝城よ!」
レベッカがにこりと微笑む。
「ま、魔帝城っ!?」
いつの間にかここに連れてこられたと思いきや。つまり魔帝城って魔帝さまの居城であり魔帝国の中心だ。
実際に目の前にしてみたら緊張しないわけがない。門の左右には武器を持った門番が立っているし、巡回する騎士たちも屈強だ。
「ほら!ロジーも早く」
レベッカが俺の手首を取って引っ張る。
「ちょ……レベッカっ!?怒られるのでは!?」
早速騎士や門番たちが気付いて視線をこちらに向ける。おいおい、待て待て待て!
武器でも向けられたら……!
「お帰りなさいませ、姫さま」
「早速魔帝陛下に知らせを」
うん……?何故だか門番たちは嬉しそうにレベッカに目を向け、騎士たちは魔帝さまにお知らせに行った。てか何故魔帝さま!?そもそも門番たちはレベッカを何と呼んだ……?
「その……レベッカ」
魔帝城の騎士や門番たちに温かく迎えられるレベッカは何者なんだ……?
「その……ロジー。言って……なかったわね」
レベッカが少しうつむきがちに告げる。
「私は……」
レベッカが俺の目をまっすぐに見上げたその時、魔帝城の荘厳な扉が勢いよく開く。あんなに重そうなのにいとも簡単に……!?
そして扉の向こうから魔族と思われる男女が現れる。
しかも男性の方は明らかに魔竜系だ。黒髪に赤い瞳、魔竜の角、翼、尾、爪を持つ。
「レベッカ!帰りをいまかいまかと待っていたぞ!」
「……お、お父さま」
え……レベッカのお父さんんんんっ!?
「てっきり転移で帰ってくると思ったのに」
「んもぅあなたったら。せっかくの初冒険よ?楽しんでこなくてどうするの?私はルオさまの方針に賛成よ」
そう告げたのはレベッカと同じ紫のロングヘアーに魔族角、金色の瞳の女性だが背中からはコウモリのような翼が生え、後ろからは細めのしっぽが見える。
「うぅ……セレーナ」
どうやら女性の方はセレーナさまと言うようだが。
「それよりもレベッカ。ちゃんと彼に説明してなかったの?」
その時セレーナさまが困ったように苦笑する。
「その……ロジー。私のお父さまとお母さまで……」
やはりセレーナさまはレベッカのお母さんだったか。魔族種は違うようだが髪と目の色はそっくりだ。
「魔帝と魔帝妃だ」
とルオさん。ええええぇっ!?マジで……魔帝さまと魔帝妃さま……しかもレベッカはふたりの娘なら……シュヴァルツィア魔帝国の正真正銘の姫である。
思えばルオさんが魔帝の一族も魔竜系だと言っていた。そっか……引っ掛かっていたのはそこだったのだ。
「その……ロジー。黙っていてごめんなさい。でも私……ロジーとは友だちでいたかったから」
「……その」
「そうだなぁ。ま、立場としては微妙なんだよなぁ。神の眷属と神を崇める魔族の長の娘」
「うぅ……」
レベッカが俯く。
「でもロジー、お前は俺の眷属なのだからお前が望むのなら魔帝だって許すだろう?」
そうルオさんが魔帝さまを見やれば。
「それはその……我らが祖でもあらせられる」
魔帝さまがセレーナさまと共にルオさんに頭を垂れる。
魔族の長ですらルオさんに頭を垂れるとは……やはり神さまなのだ。そして俺はその眷属。魔人となった。
「それに俺も子孫のかわいい末姫の願いは叶えたい」
それって明らかにレベッカのことだよな……?
「俺は……その、叶うならレベッカと友だちでいたいと……思う。それは認めてもらえるんですか?」
「ロジー!」
レベッカが嬉しそうにこちらを見る。するとルオさんが満足したように頷いた。
「そう言うことだ、魔帝ロードよ。どうだろうか?」
「ふぐ……その、レベッカはかわいい娘ですが……しかしその、同年代で気兼ねなく接することができる友人を作ってやりたいとは思います。私も……その気持ちはよく分かりますから」
そっか。魔帝さまも魔帝を継ぐ皇子だった頃にそう願ったのだろうか。
「ふふ……そうねぇ」
セレーナさまもそれが分かっているのかクスリと微笑んだ。
「だが……泣かせたら許さんからな」
ひぃっ!?むしろ魔帝の凄みに俺が泣きそうですが!?
「こーら」
しかし瞬時にセレーナさまに怒られしゅんとしていたが。
「レベッカのこと、よろしくね」
「……も、もちろんです!」
セレーナさまの言葉に頷けば、レベッカが嬉しそうに抱き付いてきた。
「れ……レベッカ!?」
「ロジー!大好きよ!」
だ、大好きって……ええええぇっ!?
「れ……レベッカあぁぁぁぁっ!!?」
魔帝さまの絶叫まで響いたのだが。その……友だちとしてだよな?そうそう、きっとそう!だからそう言う大好きじゃないよな?
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